産業医の選任
平成18年(2006年)に改正された労働安全衛生法により、50名以上の従業員が常駐する企業・職場では、産業医の選任が義務付けられています。従業員は常時50名以上の労働者を使用するに至ってから14日以内に産業医を選任しなければなりません。
また産業医に欠員が出た場合も、同じく14日以内に選任し、遅滞なく所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません(安衛則様式第3号による届出)。
届出の際に必要な書類は以下の3点です。
(1)労働安全衛生規則様式第3号「衛生管理者・産業医選任報告」
(2)医師免許証の写し(ただし原本持参を指示される場合あり)
(3)産業医資格を証明する書面
企業の規模と産業医の契約形態
すべての業種・職種において、事業場の規模(常時勤務する従業員数)によって選任産業医数や契約形態(嘱託か専属)が異なるので注意が必要です。事業規模が大きい場合は、複数名の産業医を「常勤させる義務」があります。逆に従業員が50名未満の小事業場では、産業医を選任する義務はありませんが、従業員の健康管理を行うにあたって医師などの医学知識を有する者に、従業員の健康管理を行わせるように「努める義務」があります。
嘱託産業医とは?
常時5名以上999名以下の従業員を使用する事業場では、産業医の選任形態は嘱託でよいとされています。つまり正社員として 雇う必要はありません。多くの企業は嘱託産業医を選任しています。ただし、有害業務に従事している労働者が500名以上いる企業の場合、 専属産業医が必要となります。
《嘱託産業医選任のポイント》
初めて産業医を選任する場合は、体制づくりなどにご経験のある産業医の選任をおすすめしています。また、経営方針等への理解、気軽に相談できる人柄、コミュニケーション能力や相性なども選任のポイントです。近年では、メンタルヘルス問題への対応も重視されておりますので身体の健康およびメンタルヘルス対応力も必要な能力とされています。
専属産業医とは?
常時1,000名以上の従業員を使用する事業場と、下記の表に挙げる業務に携わる事業場で500名以上の従業員を使用する場合は、 専属産業医を選任しなければなりません。また、常時3,000名を超える従業員を使用する事業場は専属産業医を2名以上選任する必要があります。
業種 | 事業場の規模 (常時使用する労働者数) |
産業医の選任 | |
産業医の人数 | 専属の産業医の選任が必要な事業場 | ||
すべての業種 | 50名未満 | 産業医の選任義務はなし | |
50~499名 | 1名 | 該当なし | |
500~999名 | ※1の(1)参照 | ||
1000~3000名 | 該当なし ※1の(2)参照 |
※1 専属の産業医が必要な事業場
(1) 労働安全衛生規則第13条第1項第2号で定める特定業務(有害業務)に常時500名以上の労働者を従事させる事業場
(2) 常時1,000名以上の労働者を使用するすべての事業場
注:専属産業医=その事業場に所属している産業医(下段参照)
500名以上が常勤する事業場で専属産業医が必要な業務(安衛則第13条第1項第2号)
1 | 多量の高熱物体を取扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務 |
2 | 多量の低温物体を取扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務 |
3 | ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務 |
4 | 土石、獣毛等の塵埃又は粉末を著しく飛散する場所における業務 |
5 | 異常気圧下における業務 |
6 | 削岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務 |
7 | 重量物の取扱い等重激な業務 |
8 | ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務 |
9 | 坑内における業務 |
10 | 深夜業を含む業務 |
11 | 水銀、砒素、黄燐、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、一酸化炭素、二硫化窒素、亜硫酸、ベンゼン、アニリン、その他これらに準ずる有害物のガス、蒸気、又は粉塵を発散する場所における業務 |
12 | 病原体による汚染のおそれが著しい業務 |
13 | その他厚生労働大臣が定める業務 |