冬の血圧対策について

1月~2月は1年で最も寒い季節になります。
血圧は気温の変化に影響を受けると言われており、冬場は血圧が上昇しやすい季節と言われています。定期的に血圧測定をされていている場合、この時期に血圧が高くなるという方も多いのではないでしょうか?

寒さによる血圧の急上昇が起こると、脳卒中などの循環器疾患の発症リスクも高まりますので、この季節は血圧の変動に注意が必要です。
今回は冬の血圧対策についてお伝えします。

血圧の基礎知識

血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の内側の壁を押す力のことです。
血管は全身に存在しますが、普段ご家庭や健診などで測定している血圧は上腕動脈の圧力です。

血圧の高さは心臓から押し出される血液の量や血管の弾力性、末梢血管の抵抗力などが関係しています。また、腎臓や神経系、ホルモンなど様々な要因によって調整されています。

血管を流れる血液の量が多ければ血管の壁には強い圧力がかかり血圧が上がります。また、末梢血管の収縮や、動脈硬化に伴い血管が硬くなることでも血圧が上がります。

血圧は一定ではなく、血圧を測定する時間帯や季節、起床や食事、運動などの日常生活、精神的ストレスや測定時の室温など、さまざまな原因により常に変動しています。

◆最高血圧(上の血圧)と最低血圧(下の血圧)とは?

心臓はポンプの様に収縮したり拡張したりして全身に血液を送り出しています。

心臓が収縮して血液が全身に送り出される時、血管にかかる圧力が大きくなります。この時の血圧が最高血圧(上の血圧)となります。
逆に心臓が拡張して、血液が心臓に戻される時、血管にかかる圧力が低下します。この時の血圧が最低血圧(下の血圧)です。
(最高血圧は収縮期血圧、最低血圧は拡張期血圧とも言われます。)

◆高血圧とは?

以下の基準に該当すると高血圧となります。
健診等での測定値が高血圧領域であった場合は、ご自宅で血圧を測定しましょう。
家庭血圧でも以下の高血圧基準に該当する場合は、循環器内科等にご相談いただくと安心です。

家庭で測定した血圧
(家庭血圧)
最高血圧 ≧ 135mmHg または
/かつ
最低血圧 ≧ 85mmHg
医療機関などで測定した血圧(診察室血圧) 最高血圧 ≧ 140mmHg または
/かつ
最低血圧 ≧ 90mmHg

 

冬に血圧が上昇する原因

冬の血圧上昇は、体温調整機能と関係しています。体温調節の方法は発汗の他、血流での調整が行われています。

寒い時は皮膚表面近くの血管を収縮させて血流を低下させ、体の内部に血流を集め、体の外に熱が逃げるのを抑えています。冬に血圧の上昇が起こるのは、このように寒さによって血管が収縮することが原因となっています。

◆冬の血圧管理のポイント

冬に血圧が上昇するのは、寒さによって血管が収縮することが原因となるため、「温度差に注意すること」がポイントとなります。
減塩などの基本的な血圧対策に加え、以下のポイントに注意しましょう。

外出の際はマフラーや手袋、帽子などの防寒対策を行い、寒さの体への影響を軽減させましょう。

  • 室内は暖房器具を用いて室温を調整しましょう。
  • 室内でも居室と温度差が生じやすい、浴室や脱衣所、トイレについても、温度差が生じないように注意しましょう。脱衣所や浴室は、利用前にあらかじめ温めておくと良いでしょう。
    特にトイレについては寒さだけではなく、排せつ行為によっても血圧が上昇する点に注意が必要です。夜中や早朝にトイレに行かれる際は羽織ものを身につけるなど着衣の工夫も大切です。
  • 早朝の運動も要注意です。
    朝の運動習慣をお持ちの方も多いと思いますが、朝は覚醒に伴い血圧も上昇する時間帯です。朝、寒い状態で負荷の高い運動を行うことは、血圧の急上昇をもたらします。
    有酸素運動自体は高血圧予防にも効果的ですが、実施される場合は昼間の温かい時間帯に行う様にしましょう。
  • 飲酒は翌朝の血圧を上昇させます。お酒を多く飲んだ翌日の、冷え込みが厳しい朝は、血圧の状態により注意をしましょう。
  • 血圧未治療の方で冬場だけ血圧が高くなる場合(高血圧の基準に該当する方)は、循環器内科やかかりつけ医に相談しましょう。

家庭血圧を測定し自身の血圧をチェックしましょう

血圧は常に変動していますので日々の血圧測定が大切になります。
健診時の血圧が正常範囲でも、早朝だけ高血圧となるケース(早朝高血圧)なども見られます。血圧が高めの方は家庭血圧を測定してご自身の血圧を把握する習慣をつけましょう。

家庭血圧を測定する場合は、上腕で測定するタイプの血圧計がおすすめです。
測定のタイミングは、朝と夜の2回で、朝起床後1時間以内(食事、服薬の前)、夜は就寝前に、トイレを済ませ1~2分間程度安静にした後に座った姿勢で測定しましょう。
いつも同じタイミング、同じ状況で測定することが大切です。

測定結果はスマホアプリやメモ用紙などに記録しておき、受診する場合はその記録を主治医に見せましょう。

株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子