塩分摂取と健康

毎年3月の第二木曜日は世界腎臓デーとなっています。

現在、日本には約1,330万人(成人約の8人に1人)の慢性腎臓病患者がいると言われています。
慢性腎臓病を予防するため生活習慣の一つに「減塩」があります。

日本人は諸外国と比較して塩分の摂取量が多いと言われています。
塩分の過剰摂取は腎臓だけでなく、健康に様々な影響を与えますので、日々減塩を意識していくことが大切です。

今回は塩分が体へ与える影響と、減塩の対策についてお伝えします。

食塩(ナトリウム)のはたらき

私たちは通常、塩分を「食塩(塩化ナトリウム)」という形で食品から摂取しています。
食塩に含まれるナトリウムは、細胞内外のミネラルバランスを保つために不可欠な物質で、主に細胞の外側に存在しています。

食事から摂取されたナトリウムは小腸で吸収された後、腎臓から尿へと排出されます。
体内のナトリウム量は腎臓で調節・維持されています。

ナトリウムは多くのはたらきを持っており、体内の水分を保持し、循環血液量をコントロールして血圧の調整を行ったり、筋肉の収縮や神経伝達に関与していたり、胆汁や腸液などの材料となっています。

ナトリウムの過剰・不足の影響

過剰になると

体内のナトリウムと水分の量を調整するために血液量が増加し、血圧が上昇します 。

高血圧は、

  • 動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞等の原因となる。
  • 心臓にも負担をかけるため、高血圧の状態が続くと心肥大を起こし、心不全につながることもある。
  • 高血圧自体が慢性腎臓病の原因や悪化の要因となることが分かっている。

高血圧だけでなく、ナトリウムの過剰摂取自体も血液の濾過の際に腎臓に大きな負担をかけ、蛋白尿を増加させるとも言われています。

ナトリウム摂取が減ると ⇒ 腎機能低下を抑制し、高血圧や心血管疾患の予防につながります。

【ナトリウムの過剰摂取による腎臓病や心血管疾患以外のリスク】

  • 胃がんの発症・死亡リスクを上昇させる。
  • 余分な塩分と一緒にカルシウムの尿中排出が増えることで、尿路結石や骨粗鬆症のリスクを増加させる。
  • 細胞外液が増えることによって、むくみを生じさせる

不足すると

通常の食生活ではナトリウムの不足になることはないと言われています。

暑さのために発汗が増えたり、胃腸炎などで激しい下痢や嘔吐を起こした場合には、ナトリウムが不足することがあります。
ナトリウムが不足するとだるさや吐気、食欲不振、頭痛などの様々な症状が起こります。

日本人の塩分摂取量と目標量

令和5年国民健康・栄養調査における成人の食塩摂取量平均値は9.8gでした。(男性10.7g、女性9.1g)

一方、日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人の塩分摂取目標量を男性7.5g未満、女性6.5g未満と設定しており、高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための塩分量は、男女とも6.0 g/日未満とされていて、実際の摂取量と目標量には大きな差があります。

減塩対策

塩分摂取量を減らしていくためには、日々「減塩」を意識いただくことが効果的です。
以下の減塩の工夫を参考に、出来ることから実践してみましょう。

  • 梅干しや漬物、ハム・ソーセージや練り物などの加工食品には、保存性を高めるために塩分が多く含まれています。摂る量や頻度を減らしましょう。
  • ラーメンやうどん等の麺類のスープには、塩分が多く含まれています。
    スープを全部残すことで2~3g程度の減塩になります。スープはなるべく飲まずに残すようにしましょう。
  • 味噌汁には塩分が多く含まれています。具沢山にして汁を減らしたり、飲む回数を1日1回までにするなどして、味噌汁の摂り方を工夫しましょう。
  • ナトリウムが多く含まれる醤油や食塩を使う代わりに、塩分が少ない酢やポン酢、胡椒、唐辛子、からし等の調味料を利用して味付けすることもお勧めです。また生姜やニンニク、ねぎ、三つ葉、ごま、しそ等の薬味を上手に使うことで、塩分の多い調味料を使わなくても料理の味にアクセントがつき、美味しく食べることができます。
  • 醤油や味噌、ソース、ケチャップなどの調味料だけでなく、加工食品などでも減塩商品が多く販売されています。このような減塩商品を積極的に利用しましょう。
  • 塩分の摂取目標量を意識して日々食事を摂るようにしましょう。加工食品には「栄養成分表示」として、その加工食品に含まれる「食塩相当量」が記載されています。
    この食塩相当量を確認して頂くことがお勧めです。

株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子