アルコールとの上手な付き合い方について

新型コロナウイルス感染症の流行が続いていますが、皆さんの飲酒習慣にはどのような影響があったでしょうか?

会食の自粛により、お付き合いでの飲み会は減っているという方が多い一方で、テレワークや外出自粛の影響で在宅時間が増え、早い時間から長時間飲み続けてしまうなど、飲酒量が増えている方も多いようです。

今回はアルコールが体に及ぼす影響、アルコールを上手に楽しむ方法についてお伝え致します。

アルコール代謝の仕組み

飲酒後、お酒に含まれるアルコールは胃と小腸上部から速やかに(1~2時間程度)吸収され、肝臓で2段階のステップを経て代謝されます。

1段階目の代謝ではアルコール脱水素酵素(ADH)によって、有害なアセトアルデヒドに代謝されます。アセトアルデヒドは人への発がんを起こす可能性がある物質で、フラッシング反応(顔面紅潮・動悸・頭痛などの症状が起こること)や二日酔いの原因と言われています。

2段階目の代謝で、このアセトアルデヒドが主に2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって無害な酢酸に代謝されます。酢酸は最終的には炭酸ガスと水に分解されます。
アルコールの分解速度は個人差が非常に大きいと言われており、ビール中ビン1本(アルコール量20g)の分解に、男性では2.2時間、女性では3時間程度かかると言われています。

アルコール代謝の個人差

アルコールの「強さ」については、遺伝的要素が関係しています。
アセトアルデヒドを分解するための酵素、2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の活性が、遺伝的に高いタイプ、低いタイプ、そして全く働かないという3つのタイプに分かれていると言われています。

この酵素の活性が低いか全く働かないタイプの方は、少量の飲酒でも血液中のアセトアルデヒド濃度が上がり、フラッシング反応を起こします。日本人の約半数は、酵素活性が低い、もしくは全く働かないタイプだと言われています。

遺伝的要素以外では、肝臓の大きさ、年齢も影響すると言われています。肝臓が大きい方がアルコールの分解速度が速いため、大きい人は小さい人より、男性は女性よりアルコールの代謝が早く、また、中年の方よりも高齢者や年少者はアルコール分解が遅いと言われています。

アルコールが体に与える影響

アルコールは適量であれば、不安感を減らして気持ちを明るくし、コミュニケーションをスムーズにすると言った良い効果をもたらします。
しかし飲酒量が増えると、肝臓病、膵臓病、高尿酸血症、高血圧、脳梗塞や脳出血、虚血性心疾患、脂質異常症、2型糖尿病など様々な病気のリスクを上昇させると言われています。

特にアルコールを1日平均60g以上(缶ビール500mlなら3本以上)飲む多量飲酒は、認知症のリスクを上昇させたり、発がん(口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸・乳癌)の原因となるそうです。また脳梗塞や脳出血については、そのリスクが2倍前後上昇するとの研究もあります。

少量の飲酒で赤くなる体質の2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱い人では、アセトアルデヒドにより食道癌のリスクが大幅に高まると言われています。このような体質の方は、無理な飲酒は控えるようにしましょう。

アルコールと上手に付き合うために

アルコールを上手に楽しむために、まず大切なことは「適度な量を飲む」ということです。適度な飲酒量とは、1日のアルコール摂取量が20g程度(ビール…中ビン1本、日本酒…1合、チュウハイ(7%)…350ml缶1本、ウィスキー…ダブル1杯)です。

飲酒後にフラッシング反応を起こす体質の方は、アルコール分解が遅く、がんをはじめとした様々な臓器障害を起こしやすいと言われていますので、飲酒量は少量に抑えましょう。

また、アルコールの血中濃度が急速にあがると悪酔いの原因となります。食事やおつまみと一緒にゆっくりとしたスピードで楽しみましょう。チェイサーを間に挟みながらの飲酒もおすすめです。
加えて週に2回程度の休肝日を持ち、肝臓を休ませることも大切です。定期健診では肝機能もチェックし、飲みすぎていないかのチェックをするようにしましょう。

コロナ禍の影響により家で長時間飲んでしまうという方は、「21時以降は飲まない」というように、時間を決めて飲んでいただくのも良いでしょう。飲酒量が増えている方は、まずはコロナ禍前の飲酒量に戻しましょう。

外出自粛のために、お酒以外の楽しみがないという方もいると思いますが、人混みを避けた所での散歩や、ストレッチなどの室内運動にチャレンジしたり、読書や音楽を楽しんだりなど、飲酒以外の楽しみを是非探してみてください。

また、ストレスや活動量の低下で、寝つきが悪く寝酒をしているケースもよく見られます。アルコールは、寝つきは良くしますが、睡眠の質を落としますので、寝酒は避け、お酒以外の入眠方法を工夫するようにしましょう。

株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子