企業の防災対策について

9月1日は防災の日です。この防災の日は、1923年9月1日に発生した関東大震災にちなんで1960年に制定されました。

日本は地震だけでなく、津波や台風などによる風水害、火山噴火など様々な災害のリスクが高い国です。また新型コロナウイルス流行の様に予期せぬ感染症流行の危険もあります。

このような災害は、いつどこで起こるかを予測することは困難ですが、万が一起こった場合を想定し、あらかじめ準備しておくことで被害を最小限にとどめることも可能です。今回は企業の防災対策についてお伝え致します。

 

企業の防災対策における2つの視点

企業の防災対策では、「防災」と「BCP(事業継続計画)」の2つの視点が大切になります。

「防災」は主に生命の安全確保を目的としているのに対し、「BCP」は災害時の企業活動の維持、早期回復を目的としています。

これらの防災対策は企業規模に関わらず、すべての企業で策定することが必要です。

 

「防災」とは

企業の「防災」で最も重要なのは、従業員や顧客の安全を守ることです。

企業には「労働者の安全配慮」が義務付けされており(労働契約法第5条)、災害発生時において安全配慮義務を怠った場合は、従業員からの損害賠償請求の可能性がある点にも留意が必要です。

また防災と一言で言っても、災害の種類(地震・津波・風水害・火山・テロ等)によって講じるべき対策は異なりますので、災害の種類に応じた対策を講じる必要があります。
まずは自分の会社にはどのような災害が想定されるのかを検討しましょう。

災害の発生は多くが予測不可能です。いつ災害が発生しても慌てず対応できるように、防災マニュアルを作成し日ごろから防災訓練や防災備蓄品の使用についての講習を行い、従業員全員に周知しておくことも必要です。

また、企業周辺の地域と連携を強めておくことも有効です。日ごろから地域住民・団体との交流関係を保っておくことで、いざという時も互いに協力して災害対応を行っていくことができるでしょう。

地震への防災対策

複数の避難経路の確保や、重量のある複合機や什器等の転倒防止、窓ガラスの飛散防止、建物の耐震補強といった対策を行う必要があります。加えて停電や断水、帰宅困難者対策として、非常用照明具や発電機、飲料水や食料、毛布等の防災備蓄品を準備しておくと良いでしょう。

また、火災発生の際の初期消火や救出救護活動を迅速に行うためにも、必要な機材を準備し、保管場所を決めいつでも使用できるようにしておきましょう。

用意しておきたい防災備蓄品

以下の様な備蓄品を用意しておくと良いでしょう。

  • 水(1人1日最低2ℓ)
  • 食料品(1人1日3食分)
  • 毛布(1人1枚)
  • 医薬品(胃腸薬、解熱鎮痛剤等)
  • 救急セット(消毒液、包帯や絆創膏等)
  • 簡易トイレとトイレットペーパー
  • 衛生用品(マスク、ウェットティッシュ、タオル、生理用品等)
  • ヘルメット
  • 懐中電灯
  • 乾電池
  • ラジオ
  • 発電機

水・食料などは、基本的に3日分を準備すると良いと言われていますが、帰宅困難の長期化が予測される場合は、必要に応じた日数分の備蓄を行いましょう。

 

BCP(事業継続計画)とは

BCP(事業継続計画「Business Continuity Plan」)とは、災害に直面した際に事業資産の被害を最小限にとどめ、中核となる事業の継続、早期復旧を可能にするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などをあらかじめ策定しておく計画のことです。

BCPの作成に当たっては、以下の内容を組み込むことが求められています。

BCPの内容

  • 復旧すべき中核事業の制定中核事業の復旧についての目標時間
  • 緊急時の経営体制についての取り決め
  • オフィスや会社設備、流通などについての非常時運用ノウハウの決定
  • 各従業員と企業間での災害時対応についての取り決め
  • 従業員や顧客の安否確認を迅速に行う体制づくり

内閣府や中小企業庁が、国内の各企業に対してBCP策定の啓発を行っています。BCP策定にあたっては内閣府による「事業継続ガイドライン」や中小企業庁による「中小企業BCP策定運用指針」が参考になります。

すでにBCPが策定されている場合でも、定期的な見直しを行いアップデートしていくことが必要です。

 

内閣府による事業継続ガイドラインは令和3年4月に改訂されていますので、すでにBCPを策定している場合でも、最新のガイドラインを確認頂き、必要に応じ見直しを行いましょう。

◆事業継続ガイドライン(令和3年4月)(内閣府HPより)

http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/guideline202104.pdf

◆中小企業BCP策定運用指針(中小企業庁HPより)

https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/index.html

株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子