長時間労働と健康障害

~働きすぎて、疲れていませんか~

長時間労働の健康影響

長時間労働は、労働の負荷を大きくするだけでなく、睡眠・休養時間、家庭生活・余暇時間の不足を引き起こして疲労を蓄積させます。
長時間労働の背景には、高い仕事の成果要求(業務量が多い、質的に高度な仕事)が存在することが多く精神的負担、仕事密度の増加をもたらして、疲労の蓄積のもう一つの原因になります。

長時間労働と関連する健康問題は下記にあるように4つの項目に分類できます。脳・心臓疾患(過労死)と精神障害・自殺は、深刻な健康問題として大きな社会問題になっています。

長時間労働と関連する健康問題

 

長時間労働は、脳・心臓疾患の危険性を高める

長時間労働による健康問題のうちで、最も致命的なものは、脳・心臓疾患です。
長時間労働などの過重な労働負荷は、脳・心臓疾患を発症させる場合があり、そのような経過をたどり発症した脳・心臓疾患は労働災害として取り扱われています。

 

長時間労働は、精神疾患・自殺の危険性を高める

長時間労働者では精神的負担が増加している場合が多く、心の不調が生じる可能性があります。しかし、心の健康を取り戻すための時間(睡眠・休養・友人と過ごす時間など)は不足している現状です。

令和元年に公表された精神障害の労災認定基準では、長時間労働は精神障害の重要な要因の一つとして位置づけられています。令和元年に精神障害・自殺で労働災害認定され、1か月平均の時間外労働時間数が80時間以上であった方の数は182人でした。

 

眠気・疲労は休めのサイン

長時間労働者は、健康問題が発生する前に頻繁に昼間の眠気や疲労を経験していると考えられます。
眠気や疲労を放置すると、重大な健康障害や事故・ケガを引き起こす元になります。眠気や疲労を感じたら、まず眠り休むとともに働き方と生活を見直しましょう。

睡眠不足の影響は日々強まる

睡眠時間が短いと、健康に悪いだけでなく作業効率が下がります。また、事故やケガが起こりやすくなります。
また週末に睡眠をまとめてとっても疲労を回復できるわけではありません。毎晩しっかり睡眠をとるのが肝心です。

 

長時間労働者の労働・生活・健康チェックポイント

長時間労働による健康障害を防ぐために注意すべき項目です。
皆さんもチェックしてみましょう。

労働

<チェック!>
□ 1. 週労働時間が60時間を超える(過去1か月の平均)
□ 2. 労働時間が非常に長いと感じる
□ 3. 仕事の精神的負担が大きい

<対処のヒント>
◆週労働60時間では健康障害リスクが高まります。また、週労働60時間未満でも、自分にとって労働時間が非常に長いと感じる場合や持病がある場合は、健康影響が出る可能性があります。いずれも労働時間の短縮を心がけましょう。
◆労働時間を減らすのが困難な場合は、睡眠時間の確保と病気の治療の継続を最優先させましょう。
◆仕事の精神的負担が高い場合には、長時間労働の影響は強まります。問題を一人で抱え込まずに周りの人に話を聞いてもらうことは問題解決の一つの方法です。

生活

<チェック!>
□ 1. 勤務日の睡眠時間が6時間未満である
□ 2. タバコを吸う。
□ 3. 家族・友人と過ごす時間が足りない。

<対処のヒント>
◆1日6時間以上の睡眠を取りましょう。ただし、必要な睡眠時間には個人差があります。
◆喫煙は、脳・心臓疾患、がんのリスクを高めるので止めましょう。
◆家族・友人によるサポートは、特に精神的な健康を維持・増進する上で重要です。家族・友人との交流を心がけましょう。

健康

<チェック!>
□ 1. 仕事中、強い眠気に襲われることがよくある。
□ 2. 慢性的に疲れている。
□ 3. ゆううつな気分やほとんどのことに興味が持てない状態が 続いている。
□ 4. 頭痛、めまい、手足のしびれ、脱力感、脈の乱れ、胸痛などの症状がある。
□ 5. 調子が悪いのに専門家に相談していなかったり、医療機関を受診していない。
□ 6. 健康診断で血圧、血糖、脂質の異常を、1つ以上指摘されたことがある。

<対処のヒント>
◆昼間の強い眠気、疲労が続いたら、睡眠・休養を増やしましょう。
◆ゆううつな気分やほとんどのことに興味が持てない状態が続いたら、うつ病かもしれません。頭痛、めまい、手足のしびれ・脱力感、脈の乱れ、胸痛などが、脳・心臓疾患の予兆の可能性もあります。いづれの場合も産業医、保健師、医療機関に相談しましょう。
◆長時間労働では、忙しくて、健康管理がおろそかになりがちです。病気の治療や生活習慣病対策に取り組みましょう。

 

最後に

厚生労働省では、労働者の疲労と勤務状況をチェックするツールとして「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」を公表しています。このチェックリストは、労働者自身のセルフチェックにも職場環境のチェックにも活用ができます。

「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/05/dl/h0520-3a.pdf

長時間労働による健康障害防止の為の制度として厚生労働省では「過重労働による健康障害防止のための総合対策」「長時間労働者への医師の面接指導」などの制度を整備しています。
これらの制度が有効に機能するためには、労働者及び使用者が長時間労働の健康・安全・生活リスクを自ら評価し、理解することが不可欠です。

株式会社メディエイト 保健師 石川 道子