インフルエンザについて
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が落ち着いてきてきましたが、例年これからの季節はインフルエンザウイルスの流行が起こる季節となります。
インフルエンザはCOVID-19が流行し始めた2020年2月以降、急激に患者数が減少し、昨シーズン(2020-2021年)もほぼ発症報告がなくシーズンが終わりました。
インフルエンザが流行しなかった理由としては、海外との移動制限を含めたCOVID-19に対する感染予防対策が効果として現れたこと、また新型コロナウイルスとの間にウイルス干渉があったからではないかと言われています。
昨シーズンは流行がほぼ発生しなかったインフルエンザですが、今年は大きな流行を起こす可能性があると言われていますので注意が必要です。今回はインフルエンザについてお伝えします。
2021-2022年シーズンのインフルエンザ流行について
例年北半球のインフルエンザ流行予測をする場合、北半球と季節が逆の南半球の流行状況が参考になります。
オーストラリアの2021年度感染状況報告ではインフルエンザ確定患者数はきわめて少なく、このことから北半球でもインフルエンザの大きな流行は起こらない可能性も考えられます。
一方でアジア亜熱帯地域では、2021年夏季にバングラディッシュやインドにおいてインフルエンザの流行が発生しており、今後国境を越えた人の移動が再開されれば、これらの地域から世界へインフルエンザウイルスが広がっていく可能性があります。
また2020年以降インフルエンザの流行が起こらなかったことで免疫を持った人も減少し、社会全体の集団免疫が形成されていないことから、海外からウイルスが持ち込まれた場合には大きな流行を起こす可能性も考えられます。
インフルエンザ流行備えワクチン接種を
英国政府は「今年のインフルエンザは早期に流行が始まり、昨年流行がなかったために例年の 1.5 倍の大きさの流行になる可能性がある」として、インフルエンザワクチンの接種を呼び掛けています。
日本感染症学会からも「2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方」についての提言の中で、インフルエンザワクチンの積極的接種を呼び掛けています。
インフルエンザはワクチンにより発症・重症化予防が可能な感染症です。またワクチン接種はインフルエンザによる発熱等の症状を減らし、医療機関への負担の軽減にもつながります。
今後のCOVID-19流行再拡大に備え、可能な限りインフルエンザワクチンを接種しましょう。
COVID-19ワクチン接種とインフルエンザワクチンの接種間隔
現在、日本でも多くの方がCOVID-19ワクチンの2回接種を受けられています。COVID-19ワクチンをこれから接種予定、また1回のみ接種の方については、まずCOVID-19ワクチンを優先して接種いただくと良いでしょう。
日本ではCOVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの接種間隔を2週間以上開ける必要があります。この点にご注意いただき、ワクチン接種スケジュールを立てて頂く必要があります。インフルエンザワクチンの接種回数は、13歳以上は原則1回接種です。
6か月以上13歳未満の小児や医師が必要と判断する場合は2回接種で、2回接種する場合は2~4週間の間隔で接種します。
インフルエンザワクチンの今期流通量と接種時期
今シーズンのインフルエンザワクチンは、原料不足などもあり昨年度よりも供給が遅くなっています。供給の立ち上がりは遅れますが、12月中旬まで順次出荷が続けられ、昨シーズンより供給量が少なくなるものの、例年の接種量に相当する程度は供給される見込みとなっています。
日本でのインフルエンザ流行は例年12月~4月頃で、流行のピークが1月末~3月上旬を言われていますので、インフルエンザワクチンは12月中旬までに接種を終えるようにしましょう。
インフルエンザワクチンの効果
インフルエンザワクチンは感染を完全に抑える働きはありませんが、「発症」や「重症化」を抑える効果が一定程度あると言われています。
インフルエンザは発症しても多くの方が1週間程度で回復しますが、基礎疾患をお持ちの方や高齢者、小児では脳症や肺炎などの重い合併症が現れることもあります。
国内の65歳以上の高齢者施設入所者についての研究では発症の34%~55%、死亡の82%を阻止する効果があったと言われています。
また、6歳未満の小児を対象にした研究では、発症防止に対し約60%の有効性があったと報告されています。
インフルエンザの予防のために
インフルエンザに対する感染予防については、現在のCOVID-19予防対策を継続いただくと良いでしょう。加えて睡眠と休息を十分にとり、過労を避け、バランスの取れた食事を摂り、規則正しい生活を送るなど、体調を整えておくことでウイルスに対する抵抗力をつけておくことも大切です。
COVID-19やインフルエンザに対しては換気も対策としては重要ですが、換気だけでなく湿度が下がりすぎないように湿度にもご注意いただくと良いでしょう。 (湿度の目安は50~60%)
株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子