帯状疱疹について
帯状疱疹は、一度水痘(水ぼうそう)にかかった人なら誰でも発症する可能性がある病気です。
近年、患者数は増加傾向にあり、80歳までに約3割程度の方がこの病気を経験すると言われています。
帯状疱疹の主な症状は、神経節に沿った形で現れる発疹や痛みですが、一部の方では皮膚の症状が治まった後も強い痛みが残り、日常生活に支障きたす「帯状疱疹後神経痛」といった合併症を起こすこともあります。
症状の悪化や合併症を防ぐためにも、発症時は早期に適切な治療を受けることが重要となります。
帯状疱疹とは
水痘
- ウィルスに初めて感染した時
- 多くの場合、子供のころに発症し1週間程度で治る
- 水ぼうそうが治った後もこのウイルスは神経節に潜伏する形で体内に残り続ける
帯状疱疹
- 潜伏していたウイルスが「再活性化」して発症
- 加齢や過労、ストレス、悪性腫瘍、放射線や紫外線への暴露、免疫抑制剤や抗がん剤の使用などで免疫力が低下すると、神経節に潜伏していたウイルスが再活性化して神経節内で増殖し、神経を通って表皮に到達する
- 神経の走行に沿って帯状に広がる、痛みを伴う赤い発疹や水疱といった帯状疱疹の症状が現れる
帯状疱疹の症状
初期症状
発疹が出始める数日前位から前駆痛が現れます。
通常、身体の片側に、神経に沿った帯状の形で現れ、「チクチク・ピリピリ・ズキズキ」といった痛みや違和感などが生じます。この他、微熱や頭痛、リンパ節の腫れなどの全身症状が出ることもあります。
前駆痛の後
皮膚症状としてポツポツとした赤い発疹が現れます。発疹は次第に中央が少し凹んだ小水疱となり、この小水疱が集まった形で多発します。これらの発疹は、胸やお腹、背中など(肋間神経領域)や、顔(三叉神経領域等)に多く発症しますが、それ以外でも全身どこの場所にも発症します。
皮疹は2週間程度でかさぶたとなり、最終的にかさぶたが脱落して治癒します。
発疹に伴い、帯状疱疹痛が生じます。この痛みは「ピリピリ・ジンジン・ズキズキ・チカチカ・キリキリ」と表現されるような痛みで、痛みの強さは軽度なものから、焼けるような、刺されたような強い痛みとして感じられることもあります。
合併症にも注意が必要
- 帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹の痛みが重症化し、皮疹が消えても3か月から数年以上疼痛が持続する。
- 頭頚部に帯状疱疹ができた場合、結膜炎、角膜炎等の眼合併症や耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺を起こすことがある。
帯状疱疹の診断と治療
「早期発見・早期治療」が重要となります。重症化や合併症を予防するためにも、症状に気づいたら、早い段階で医療機関(皮膚科や内科)を受診するようにしましょう。
帯状疱疹後神経痛の症状がうまくコントロールできない場合は、痛みを専門的に診てくれるペインクリニックにご相談頂くと良いでしょう。
▶ 診断
症状の経過や皮疹、神経痛の状態などにより診断が可能。
ただし症状が軽く他の疾患との鑑別が難しい場合は、血液検査でウイルスに対する抗体を検査したり、抗原検査やPCR検査、病理組織学的検査等が行われる。
▶ 治療
ウイルスの増殖を抑え、痛みなどの症状を緩和し、合併症を予防することが主な目的となります。
ウイルスの増殖を抑えるために、抗ウイルス薬が用いられます。この抗ウイルス薬は、早めに使用を開始するほど治療効果が期待できるとされており、皮疹が出現してから3日(72時間)以内に投与を開始することが望ましいとされています。
痛みに対しては、対症療法で痛み止めを使用します。
帯状疱疹後神経痛の場合、一般的な鎮痛剤が効きにくいことが多く、神経性疼痛のための鎮痛薬が使われるほか、神経ブロックが行われるなど様々な治療が行われます。
帯状疱疹の予防
免疫力低下が主な原因、予防のためには免疫力を下げない様にすることが大切
過労やストレスは免疫力を低下させます。日ごろから過労を避け、睡眠と休息を十分とるようにすると共に、ストレスへのセルフケアを行うようにしましょう。免疫力を維持するために、バランスの取れた食事を摂り、適度な運動(ウォーキング等の負荷の高くない運動)を行うこともお勧めです。
ワクチンによっても予防は可能
ワクチンは発症予防だけでなく、発症時の重症化予防や帯状疱疹後神経痛といった合併症の予防にも効果があるとされています。65歳を迎える方等を対象とした「定期接種」が2025年4月よりスタートしています。また自治体によっては、50歳以上の方にワクチン接種の費用助成を行っているケースもあります。詳しくはお住まいの自治体のホームページ等でご確認ください。
株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子