耳鳴りについて
耳鳴りの症状がある方は大変多く、その有病率は人口の10~15%程度、65歳以上の高齢者では30%以上とされています。
耳鳴りの症状は個人差が大きく、少しに気なる程度の軽いものから、日常生活に支障が出てしまう重度のものもあり、日本では治療が必要となる方が約300万人程度存在すると言われています。
耳鳴りとは
耳鳴りとは外界で音がしていないにも関わらず、「ジー」「キーン」といった雑音が聞こえるという症状のことを指します。耳鳴りには、大きく分けて以下の2種類の耳鳴りがあります。
自覚的耳鳴り
自分にしか聞こえない耳鳴りのことで、一般的に耳鳴りというとこの自覚的耳鳴りを指す
他覚的耳鳴り
血流音や拍動音など耳の近くの器官等実際に体内で発生している音で、他者でも聴取可能
一時的に起こる耳鳴りは誰にでも起こるありふれた症状で、このような数秒で消える耳鳴りであれば問題はありません。
しかし、耳鳴りによる雑音が絶えず聞こえ、精神的に苦痛を感じたり、睡眠や仕事などの日常生活に支障が出てくるような場合や、難聴等の他の耳鼻科の症状が併発している場合は、受診等の対応が必要となります。
耳鳴りの原因
■ 耳鳴りの原因
- 直接的原因:耳の病気や加齢による聴力の低下、騒音への暴露
- 間接的原因:薬剤の副作用、ストレス、睡眠不足
■ 原因となる耳の病気
- 突発性難聴やメニエール病
- 外リンパ瘻
- 老人性難聴
- 中耳炎
- 急性低音障害型感音難聴
- 聴神経腫瘍等
耳鳴りは難聴を伴うことが多く、耳鳴りがある方の8~9割に難聴が伴っています。これは、
難聴による「聞こえにくさ」を脳が察知
▼
音をよりしっかり感知するために、聴覚の電気信号をキャッチしようと
脳が過度に興奮した状態となる
▼
「音が鳴っていない時にも音が聞こえる」という耳鳴りを生じさせる
と考えられています。
耳鳴りの検査と治療
検査
- 症状についての詳しい問診
- 様々な検査によって耳鳴りを評価
- 外耳道や鼓膜の状態の確認といった耳鼻科の一般的な診察や難聴の有無を確認するための標準純音聴力検査
- 耳鳴りの音色や強さを測定する耳鳴り検査
- 必要に応じX線やCT・MRI等の画像検査
耳鳴りの原因となる病気が分かった場合は、その治療を行うことで耳鳴りの症状も改善が期待できます。
しかし、多くの耳鳴りは治すことが難しい慢性の耳鳴りです。このような慢性の耳鳴りの治療では、耳鳴りの原因や耳鳴りの苦痛の程度、心理状態によって以下の治療法を検討していきます。
治療法
薬物療法
内耳機能改善のためのビタミン製剤(ビタミンB12等)、血流改善薬、血管拡張薬、ステロイド薬等が使われます。聴覚中枢路の過活動を抑えるために抗けいれん薬が使われたり、耳鳴りによる不安を軽減するための抗不安薬や抗うつ薬が使われることがあります。
不眠がある場合は睡眠薬が使われるなど、耳鳴りに伴う症状軽減のための投薬も行われます。また漢方薬も症状の軽減に効果があるとの報告もあります。
カウンセリング
一般的なカウンセリングとは異なり、耳鳴りに対する教育的・説明的なカウンセリングが行われます。
患者に対し、聞こえ方の仕組みや耳鳴りのメカニズム、経過、治療等について説明し、耳鳴りについての患者の理解を深め、治らないという不安やストレスによる症状の悪化を防ぎます。
TRT療法
「耳鳴り順応療法」と呼ばれる治療法で、カウンセリングと音響療法が行われます。国内外の論文で8割程度の方に有効との報告もあります。
耳鳴りに脳を慣れさせ、気にならない様にすることを目標としているため、治療の即効性はありませんが、治療後約半年〜2年程度で効果が期待できるとされています。
耳鳴りでお困りの場合は
耳鳴り自体は命に関わる症状であることは少ないものの、突発性難聴やメニエール等、早急に治療を受ける必要がある病気が原因のケースも考えられます。耳鳴りが突然始まり、めまいや難聴といった症状を伴う場合は、早急に受診するようにしましょう。
また、耳鳴りだけが長く続く場合も、何らかの病気が隠れている可能性もあるため、一度受診いただくと安心です。特に、耳鳴りのために精神的に辛い、よく眠れない、仕事や家事に集中できないといった症状がある場合は、我慢せずに専門医に相談いただき、ご自身にあった治療をお受けいただくと良いでしょう。
株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子