復職判定と産業医の関係について

休職をする労働者がいる場合、復職判定について基準等、明確に定めておかなければなりません。この復職判定にあたっては産業医が重要になってきます。トラブル防止のためにも復職時には産業医を活用するようにしましょう。

 

1. 復職に必要な流れ

休職理由にもよりますが、一度休職していた労働者が復職を希望するに至ったとき、あらかじめ取り決めをしっかりと行っていなかったことが原因でトラブルになることも珍しくありません。復職に関わるトラブルとしてはやはり、復職判定の基準が明確でなかったことが関係してきます。

 

トラブルなく復職まで迎えるにはプラン練ることが必要です。特にメンタルヘルスの問題で休職することになった場合には休職中に療養に専念できるよう、企業側の支援も必要です。復職にかかる事務手続きにはどのような手順が必要で、労働者は何を用意しなければならないのか、不安のないように説明をしておかなければなりません。

 

また、主治医により職場復帰可能かどうか、診断書の提出を求めることになります。労働者本人の意向だけでなく、専門家の意見を取り入れ業務が今後できるのかどうか判定します。しかし主治医は職場のことまで詳しく知っているわけではありません。そして医師だからといって、その判断が絶対的に正しいとも限りません。産業医を選任している場合には、産業医の精査も通して総合的に判断することが大切になるでしょう。

 

さらに、復職が可能であると判断したとしても、その後のフォローが必要かもしれません。休職していた労働者の支援のプランを立て、まだ治療が必要であればそのために必要な配慮として何があるのか、また、別の特別な配慮や観察が必要なのかどうかなど、話し合ってからの復職をするようにしましょう。復職後担当する業務の内容などについても事前に把握することができれば労働者としても安心感が得られることでしょう。

 

2. 復職と産業医の関係

50人以上の事業場で選任義務が発生する産業医ですが、健康診断の結果等に対する面談などに限らず、休職や復職の際には重要な役割を担います。主治医によっても判定してもらうことはできますが、産業医の意見を取り入れることも大切です。特に復職が可能かどうかについては精神疾患等を専門にする産業医がいると心強いです。

 

医師と言ってもそれぞれに専門の分野があり、できることにも個人差があります。専門外のことについてはノータッチにしている医師もいます。そのため、できるだけ専門的な知識や経験を持つ産業医を選任しておく必要があるでしょう。

 

事業者は業務内容については詳しくても、医学のことについてはまったくの素人です。勝手な判断で休職や復職の判断をするのではなく、明確な基準のもと専門家である産業医がその判定に加われば、労働者も納得がいきやすいです。企業には労働者に対し産業医の存在について周知させる義務があるため、普段から、何か問題があれば産業医に相談するようにし、活用しやすい環境を提供してあげましょう。形だけでなく、産業医としての役割を全うさせることでトラブルのない復職を目指しましょう。

 

3. 主治医と産業医で意見が異なる場合

主治医や産業医のように専門家の意見を取り入れて復職判定をすることは大切です。しかし主治医の意見と産業医の意見が割れることがあります。このような場合、事業者としてはどうすべきなのでしょうか。

 

この場合、必ずしも答えが決まっているわけではなく、その状況に合わせて判断をすべきです。しかし一般的に主治医は患者である労働者の意見を尊重する傾向があり、そして企業側の状況までは把握できていません。これに対して産業医は企業側と労働者側、両方の意見を聞くことができ、労働者にアドバイスをすることも、企業に対し必要な措置を取るよう勧告をすることもできます。そして企業側としても産業医に対し不当な扱いはできません。つまり、企業側の意見と対立するからといってその産業医を解任するようなことは許されないのです。

 

そもそもこのようなことができてしまうと産業医の立場は弱くなり、大した意味を持たなくなってしまいます。事業者には産業医の意見を十分に尊重する必要があるのです。特に常勤する産業医であれば職場の状況をよく理解しています。こうしたこともあり、主治医と意見が分かれていたとしても産業医の意見は尊重すべきで、主治医の判断を加味しながら産業医の意見を採用するという考え方が重要になってくるでしょう。

 

4. まとめ

復職判定はあいまいな基準で行ってはいけません。特にメンタルヘルスの問題はデリケートです。できるだけ専門家である主治医、もしくは産業医の意見を聴取し、必要であれば就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮などの措置も考えなくてはなりません。復職判定のための基準は事後的に決めるではなく、休職期間に入る段階で決めておく必要があります。

 

さらに産業医が選任されているのであれば主治医だけでなく産業医の意見も取り入れるようにしましょう。専門知識に加え、実際の職場を知っているからこそできる判断もあります。