健康維持のための身体活動・運動習慣について

WHOは全世界における死亡についての危険因子として、高血圧、喫煙、高血糖に次いで「身体活動・運動の不足」を第4位にあげています。このように健康維持・増進のためには「身体活動・運動」が重要ですが、健康のために必要な身体活動・運動とは、具体的に何をどの程度行えばよいのでしょうか?

今回は、厚生労働省が推進する「健康日本21」において、身体活動・運動分野の取組みを進めるためにまとめられた「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」より、成人に勧められる身体活動・運動の内容について、今回のガイドから加わった「座りすぎ」の予防を含めご紹介いたします。

「身体活動と運動」とは

身体活動とは
安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴う全ての活動を指します。

身体活動の量が多い人は、少ない人と比較して、循環器病、2型糖尿病、がん、ロコモティブシンドローム、うつ病、認知症等の発症や罹患リスクが低いとされています。

「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」で勧められている身体活動・運動とは?

このガイドでは、「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組むこと」、そして「今よりも少しでも多く体を動かすこと」を基本的な考え方として、以下の通り身体活動・運動を推奨しています。

  1. 歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上)実施する。
  2. 息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上実施し、その中で筋肉トレーニングを週2~3日実施する。
  3. 座りっぱなしの時間が長くなりすぎない様に注意する。(今回のガイドで追加推奨「座位行動」※)
    ※座位行動:座位や臥位の状態で行われる覚醒中の行動(例えばデスクワークや座位や寝転んだ状態でテレビやスマートフォンを見ること)

「座りすぎ」と健康

近年、座りすぎ(長時間の座位行動)が健康へ悪影響を及ぼしていることが分かってきました。
長時間の座位行動により、血流や筋肉の代謝が低下し、心筋梗塞、脳血管疾患、肥満、糖尿病、がん、認知症、メンタルヘルスの不調など健康に害を及ぼし、死亡リスクを高める危険性が指摘されています。

心身の健康の維持・増進には定期的に中高強度の身体活動を行っていくことが大切ですが、このような身体活動をある程度実施していても、日々の座位行動が長いと様々な健康上の悪影響が出てきてしまうそうです。

実際に定期的に中高強度の身体活動を実施していたとしても、その実施時間は1日の起きている時間のうちわずか3~8%程度と少なく、これに対し座位行動は、起きている時間のうち6割程度と大きな割合を占めおり、より長時間の座位行動の影響が、強く健康に現れてしまうものと考えられています。

オーストラリアの研究機関の調査では、日本人の平均座位時間は世界最長の7時間との結果があり、特に日本人は座位行動が長い傾向にあることが分かっています。健康の維持増進のためには、身体活動を増やすことと同時に、座位行動をいかに減らしていくかということが重要です。

身体活動・運動を増やし、「座位行動」を短くするために

上記の身体活動・運動ガイドで勧められている活動量を目指して頂くことも重要ですが、忙しくて運動する時間が取れないという方も多いと思います。まずは日々の身体活動時間を10分プラスすることから始めてみましょう。

また座位行動については、30分に1回程度立ち上がって座位行動を中断することで、その健康リスクを減らすことができるとも言われています。

活動量UP例

  • 通勤では一駅手前で降りて歩く
  • 徒歩通勤や自転車通勤にする
  • ランチは少し遠くまで歩いて行く
  • 買い物には自転車や徒歩で行く
  • 仕事の合間にストレッチする
  • ラジオ体操を日課に加える
  • 子供と遊んだり、犬の散歩をする
  • 掃除を積極的に行う
  • エレベータやエスカレーターを使わない(エレベータは1階手前で降りて自分の足で上る、下りは階段で降りる等)

座りすぎ予防例

  • スタンディングデスクを利用する
  • 職場ではメールや内線を利用せずに相手の所まで行って用件を伝える
  • まめにコピーやプリントをとりに行く
  • スマホ等でのネットサーフィンは時間を決める
  • 家では寝ながらテレビを見る時間を減らしたり、テレビコマーシャルの際に立ち上がって家事をする

株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子