原発性アルドステロン症による高血圧について

高血圧には原因が特定できない本態性高血圧と、原因が特定できる二次性高血圧の2タイプがあります。
二次性高血圧のうち代表的なものが「原発性アルドステロン症」による高血圧です。

【原発性アルドステロン症による高血圧】

  • プライマリケア施設での有病率は、高血圧患者全体の3~12%程度と言われており、比較的頻度の高い疾患となっている。
  • 本態性高血圧と比較して脳・心血管疾患イベントの発症リスクが高く、慢性腎臓病の発症とも関係していると言われている。

合併症を予防するためには、適切な診断と治療が重要となります。

原発性アルドステロン症とは

「副腎」は左右の腎臓の上にある小さな三角形をした形の臓器です。この副腎から分泌されているホルモンに「アルドステロン」があります。

【アルドステロンとは】

  • ナトリウムと水の再吸収を促進し、血圧と水分量を適切な状態に調整するホルモン。
  • 過剰になると血圧が上昇し高血圧を引き起こす。
  • カリウムの排出を増加させるため、低カリウム血症を引き起こすこともある。

原発性アルドステロン症の原因には、副腎腫瘍(多くは良性の腫瘍)が原因となって起こるタイプと、副腎の過形成によっておこるタイプがあります。

原発性アルドステロン症による高血圧の特徴

  • 一般的な降圧剤で治療を行っても中々血圧が下がらないという「治療抵抗性高血圧」であることが多い
  • 「若年での高血圧」の方にもこの病気の方が多い。
  • 低カリウム血症を伴う場合は、疲労感や手足のしびれ、筋力の低下などが見られることもあるが、高血圧があること以外、特に症状がないことが多い。
  • 一般的な高血圧に比べて治療が難しい。
  • 脳血管疾患や虚血性心疾患、心房細動等の不整脈、末梢動脈疾患の等の合併症の発症が、本態性高血圧の場合と比べて3~5倍多い。

原発性アルドステロン症の検査

近年、スクリーニング検査が行われるようになっています。このスクリーニング検査は特に「原発性アルドステロン症の有病率が高い高血圧群」での実施が推奨されています。

【原発性アルドステロン症の有病率が高い高血圧群】

  • 低カリウム血症の合併
  • 治療抵抗性高血圧
  • 40歳未満での高血圧発症
  • 未治療時150/100mmHg以上の高血圧
  • 副腎腫瘍の合併
  • 若年での脳卒中発症
  • 睡眠時無呼吸症候群の合併

【原発性アルドステロン症 検査方法】

①スクリーニング検査
血液検査で血漿アルドステロン濃度と血漿レニン活性を測定し、原発性アルドステロン症の可能性があるかどうかを判定。

↓(疑われたとき)

②機能確認検査
生理食塩水負荷試験やカプトプリル試験、蓄尿検査などを行い、アルドステロンの過剰分泌の程度を確認。

↓(診断されたとき)

③副腎静脈サンプリング検査
アルドステロン過剰分泌の原因が副腎腫瘍か左右両側副腎の過形成かを見分けるために、副腎静脈から血液を採取。また、CT検査等で副腎腫瘍の有無や副腎の大きさを確認。

原発性アルドステロン症の治療(病気のタイプによって異なる)

副腎腫瘍が原因のタイプ
手術療法によって病気を根治することができる場合がある。
手術でこの病気が治癒し高血圧も治癒するのは約半数程度と言われている。

左右の両方の副腎が過形成となるタイプ
手術治療の対象にならず、薬物療法が行われる。
アルドステロン受容体拮抗薬が使われる。この薬はアルドステロンの働きを抑え、ナトリウムの排出を促進してカリウムの排出を減少させる働きがある。ただし、この薬はあくまでもアルドステロンの働きを抑える薬で、アルドステロンの分泌量を減らすことはできないため、根本的な治療とはならない。
なお、この薬で十分な降圧ができない場合は、その他の一般的な降圧剤も併用されることがある。

原発性アルドステロン症の予後

適切な治療が行われないと、脳・心血管疾患等の合併症リスクが大きくなります。

  • 原発性アルドステロン症であるにもかかわらず、一般の高血圧としての治療を続けていても、合併症のリスクは高いままである点に注意が必要。
  • 「原発性アルドステロン症の有病率が高い高血圧群」に該当する方や、降圧治療しても中々血圧が下がらないという方は、一度循環器内科等の専門医で相談した方が良い。
  • 若い方の高血圧の場合、「この位大丈夫」と受診されないケースも見られるが、この病気は若い方の高血圧で比較的よくみられるので、軽度の高血圧であっても一度専門医に相談する。

株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子