企業におけるメンタルヘルス対策(1) – うつ病について – 《Vol.34》

近年増加傾向にあるうつ病

近年、「うつ病」について様々な雑誌やメディアで取り上げられていますが、臨床医学の場でうつ病の患者数は実際に増加しているのでしょうか?

「うつ病」は、検査などで明確に診断することが難しいため、診断基準が少し変わることによって患者数にかなりの差がでてきます。しかしながら現実的に厚生省に報告されているうつ病や、双極性障害(躁うつ病)の患者数は、すべての年齢層にわたって毎年増加しています。

経済不況は改善しつつあると言われているものの、特に就業世代には、失業率の上昇、将来的な経済状況への不安、その他様々なストレスの増加により、うつ病の発生原因となる社会・心理的要因が増加傾向にあるといえます。さらにうつ病患者数の増加は、我が国の高い自殺者数とも関連し、社会問題となっています。

また高齢化社会に伴い、高齢者層のうつ病患者の人口が増えています。特に高齢者のうつ病の原因として特徴的なのは、自身が持つ基礎疾患や疾病、孤独、経済的困窮などが複雑に重複している例が多く、一般的な医学的治療だけでは症状の改善に苦心する場合も多く見られます。

周囲からは病気とわかりにくい「新型うつ病」

うつ病についての啓発活動が活発になった事で、医療機関を受診する人数が増えた事も患者数の増加要因の一つと考えられます。啓発活動の発展と共に、「うつ病」という疾患や「精神科」に対する患者さん本人や周囲の人々(家族、上司、企業側等)のネガティブな意識が低くなり、比較的気軽に専門医を受診する人が増加したのではないかと推測されます。

近年の傾向としては、従来の不眠・食欲不振のような生活全般の意欲低下を主訴とする「外因性・身体因性うつ病」や「内因性うつ病」といったカテゴリーに当てはまらない、「新型うつ病」「仮面うつ病」「非定型うつ病」という疾患が、主に若年層に増加しています。

「新型うつ病」や「仮面うつ病」に関しては一見、食欲もあり、趣味などには没頭する活力があるものの、就業時やストレスの多い場面では意欲を失ってしまうという症状で、周りから疾患を理解されづらい為、周囲とのトラブルの原因となってしまう例も多く、また医師や産業医も診断や就業判定に苦慮する例が増加しています。

株式会社メディエイト産業医 望月香織(Kaori Mochizuki M.D)