産業医の契約形態について知っておこう

産業医と契約する場合は、契約形態を十分理解しておく必要があります。またいつどのタイミングで産業医を選任するべきかも考えておくと、将来産業医が必要な場合でもスムーズに対応できます。安心して産業医と契約するために、ここでは産業医との契約形態と契約で必要なものや流れについて解説しています。

「産業医との2つの契約形態」

産業医を雇うためには2つの契約形態を知る必要があります。1つは、病院・会社と直接契約する方法です。産業医との契約というと直接契約するケースが多く、病院・会社に常勤し他の職員と同じように働きます。

もう1つは、業務委託契約です。間に企業が介入して契約する方法で、普段は医師として働きながら決まった日のみ産業医として勤務します。基本的な仕事内容はどちらも同じですが、融通が利きやすいのは業務委託契約になります。残業もありませんし、時間に拘束されないので精神的な負担も少ないでしょう。

「産業医と直接契約する場合の一般的な契約形態」

産業医は直接契約と業務委託契約によって契約されることがわかりました。ここではそれぞれの契約形態をもう少し詳しく解説します。一般的には直接契約がほとんどですが、業務委託契約で働くケースもあります。どちらの働き方が自分に向いているのか、事前に確認しておくと安心です。

「産業医と直接契約する」

直接契約は、いわゆる「雇用契約」のことを言います。もっとも一般的な契約形態で、正職員として働いているのが基本です。他の職員と同じ時間勤務しているのでコミュニケーションも取りやすく、またしっかり意思疎通ができるので、職員の健康状態や精神状態が把握しやすいでしょう。

「業務委託して契約する」

一方で業務委託契約は、間に企業が介入する方法です。雇用されていないので融通が利きやすく使用者と労働者が対等なので希望を伝えやすいでしょう。またサポート体制が整っているところも多いので、雇用契約よりも無理なく働けると言われています。産業医としての実績が少ない場合は、業務委託契約からはじめてみるのもひとつの手です。

「産業医との契約で必要なものと契約の流れ」

産業医として働くためにはいくつか書類が必要になります。また条件もありますので、事前にしっかり確認しておきましょう。ここでは契約で必要な書類と契約の流れについて解説します。

「必要書類」

準備するのは、「産業医選任報告書」「医師免許コピー」「労働安全衛生規制第14条2項に規定する者を証明する書面またはコピー」の3つになります。

・産業医選任報告書
厚生労働省がホームページで公開しており簡単にダウンロードができます。印刷の際は必ず白色度80%以上の用紙を使用し、必要事項を記入して提出します。

・医師免許コピー
これがなければ産業医として働くことはできません。そもそも産業医は医師ですから資格は必須です。

・労働安全衛生規制第14条2項に規定する者を証明する書面
産業医であることを証明する書類になります。

「契約の流れ」

基本的な流れは、
1.職場巡視
2.書類確認作業・判定
3.面談
4.人事担当者と打ち合わせ

となります。書類確認作業・判定では職員の健康診断結果などで、必要な場合のみ面談対応します。状況によって流れは変わってくるため適宜情報共有が必要になるでしょう。

「契約が必要な産業医の種類」

産業医は、すべての病院・会社が契約しなければいけないわけではありません。産業医が必要になるのはそれなりに規模の大きい病院・会社です。職員の人数も関係してきますから、事前に知っておくと安心です。

まず常時50名以上1000名未満の場合は嘱託契約になります。常時3001名を超えると専属産業医が必要になり、前者の場合は1名・後者の場合は2名の選任が求められます。ただし職員の人数が3000名未満でも深夜業を含む場合や低温物体、指定の化学物質等を扱う場合は専属産業医が必要になってきます。常時1000名以上でも専属産業医を選任することになるでしょう。

「産業医の勤務形態と契約について」

先ほど嘱託産業医と専属産業医について触れましたが、個々ではもう少し詳しく勤務形態と契約について解説します。業務内容はどちらも同じですが、職員の人数によって選任される産業医が異なります。

「嘱託産業医」

嘱託産業医は、非常勤のことを言います。職員の人数が少ない場合に選任され、普段は他の病院で働いているケースがほとんどです。そのため毎日勤務することはなく月に1回~数回程度と少ないでしょう。限られた時間の中で職員の健康状態や精神状態を確認し指導するため、産業医としての能力が求められます。

選任される職員の人数は、先にも述べたとおり50名以上1000名未満。1000名未満でも状況によっては専属産業医を選任することになるケースもありますので注意してください。

「専属産業医」

専属産業医は、常勤で働く産業医のことを言います。その病院・会社に勤めているため労働時間は他の職員と同じですし、週4日以上勤務が基本です。常に職員の健康状態や精神状態を把握しているため嘱託産業医よりも広い視野でさまざまな状態を知っておく必要があるでしょう。

選任される職員の人数は常時1000名以上。3000名を超える大規模な病院・会社においては2人以上の専属産業医が必要になります。職員の人数が多いほど診る人数も増えますから、効率良くスムーズに対応できることが求められます。業務の大変さでいうと専属産業医かもしれません。

「それぞれのメリット」

嘱託産業医は非常勤なので業務委託契約になり、月1回~数回の勤務で良いのであまり負担がありません。また普段は他の病院・会社で働いているため、職員の小さな変化にも気づきやすい点はメリットになります。またサポート体制が整っていることも多いので安心して働けます。企業を介して契約するため、希望を伝えやすいのもメリットでしょう。

一方で専属産業医は同じ病院・会社の職員を診るためスムーズな対応が求められます。そのため嘱託産業医よりも効率性の高い産業医が多いでしょう。また普段から職員と接する機会が多いので意思疎通を図りやすい点は大きなメリットになります。

「産業医との契約で注意したいポイント」

ひと口に産業医と言ってもさまざまです。いろんな産業医がいるからこそ、自社に合った産業医と契約する必要があります。ここでは契約するうえで注意したいポイントと契約の更新について解説します。

「契約時のポイント」

1.事業所に合った産業医と契約
先ほども述べたように、“自社に合った産業医と契約”するのはとても重要になります。職員の人数によって選任される産業医は異なりますから、その点もしっかり理解しておきましょう。

2.はじめてなら紹介がおすすめ
はじめて産業医と契約する場合、企業を介したほうが直接産業医とやり取りができるのでより自社に合った人材を選ぶことができます。また更新時の手数料が不要なのでコストもかかりにくいでしょう。

「契約更新について」

更新については、契約内容によって異なります。一般的に業務委託契約をしている場合は紹介会社が介入しているので1年ごとに更新されます。しかし直接契約している場合は事業所によって異なります。また契約を変更したい場合も業務委託契約はスムーズに調整できますが、直接契約は会社側が直接契約解除を伝えることになります。

「産業医は契約形態を十分理解する必要がある」

同じ産業医でも、契約形態によって業務の遂行状況や契約の更新などが異なります。また、紹介会社を介して契約している場合とそうでない場合とでも良し悪しが変わってきますので、産業医と契約するときは「契約形態」や「業務の進め方」などを十分理解しておく必要があるでしょう。