コロナ禍のテレワークうつ

今回は、「コロナ禍のテレワークうつ」に関する、個人や企業でできるマネジメント法などについて考えてみましょう。

テレワークうつとは

うつの中でも、テレワークが原因で発生したうつやうつ症状のことを指します。

新型コロナウイルス感染症によってもたらされた急なテレワークは日本人の身体やメンタルに様々な影響を与えています。

テレワークうつの原因

  1. 椅子に座ったままの長時間労働
  2. 孤独感
  3. 仕事とプライベートの切り替え
  4. コミュニケーション上のストレス
  5. 運動不足や食事の乱れ
  6. 正しく評価されていると感じられない

症状はさまざま

不眠、倦怠感、イライラ、落ち込み、怒りっぽくなる 等

コロナ禍は人の心にいろいろな不安をもたらします。
不安が高じると不安障害に至る場合があります。

原因としては脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)のバランスの乱れ、恐怖や不安に関連する脳の偏桃体の過剰反応などが考えられています。

テレワークうつを防ぐマネジメント法

  1. 朝礼や定期報告の実施
  2. チャットツールやビジネスツールの導入
  3. 気軽なコミュニケーションや個別面談の場を設置
  4. 適正な業務の評価基準

テレワークで感じた課題

厚生労働省が行った調査(2020年8月20日~9月25日Webアンケート)によると、

テレワークで感じた課題については、「できる業務が限られている」「従業員同士の間でコミュニケーションが取りづらい」が多数。

テレワークのデメリットについては、「同僚や部下とのコミュニケーションが取りにくい」「上司とのコミュニケーションが取りにくい」などコミュニケーションに関する事項が多数。

テレワークにおける課題

<テレワークにおけるメリット>

◆従業員

  • ワークライフバランスが向上する
  • 通勤がなく時間的、身体的負荷が軽減される
  • 業務に集中できる環境が確保しやすい(個人が使い慣れている機器や備品)
  • 育児や介護との両立が可能となる

◆事業者

  • 従業員の感染リスクを低減できる
  • 労働生産性の向上が期待できる
  • オフィス関連コストが削減できる
  • 人間関係のトラブルが低下する

<テレワークにおけるデメリット>

◆従業員

  • 仕事とプライベートの区別が難しい
  • 帰属意識の低下を招くことがある
  • モチベーションの維持が難しい
  • 運動不足になりやすい
  • 上司とのコミュニケーションが取りにくい
  • 疎外感、適応への困難、昼夜逆転などのメンタルヘルス不全を誘発することがある
  • 業務に集中できる環境を確保しにくい(椅子・机・照明・静寂などが不十分)

◆事業者

  • 労務管理が難しい
  • 双方向の意思疎通が低下しやすい
  • 情報漏洩リスクが増える可能性がある
  • 教育育成、業務評価などが難しい
  • 労働生産性が低下することがある

テレワーク中の従業員個人ができること

  • 生活リズムを崩さない
    栄養バランスの良い食事を作る、時間を決めて部屋の掃除を
    する、起床時間をこれまで通りにするなど。
  • 外に出て日光を浴びる
    毎朝自宅の玄関先やベランダなど外に出て日光を浴びる。
  • 散歩やストレッチなど運動を心がける。
  • ビデオ通話などで他者とコミュニケーションを取る
    他者とコミュニケーションをとることもメンタルヘルス対策に有効な手段の一つです。

企業ができること

  • 従業員に対してテレワーク時の工夫点や健康管理について適切な情報発信をするよう努めましょう。
  • 従業員の孤立感と閉塞感をケアするために普段以上に顔の見える関係構築を大切にしましょう。

テレワークの限界を理解する

  • テレワークのデメリットに留意しつつ、そのメリットを周囲の者と共有する。
  • テレワークで効果を上げるための方法をチームで考え実行する。
  • テレワーク環境の整備が困難な場合は、オフィス勤務時と同じレベルのアウトプットを求めない。

上記のような対策例を参考によりよいテレワーク環境の為の整備や工夫を行う。

最後に

テレワークには、どこでも仕事ができる、通勤時間が減って仕事が効率的になるなどのメリットがある一方、コミュニケーション不足が生じるなどの特有のデメリットがあることもわかってきました。

深刻なテレワークうつを防ぐために、丁寧なコミュニケーションや社員の健康チェックを行うなどの対策を講じることが必要とされています。

株式会社メディエイト 保健師 石川道子

<参考・引用文献>
・厚生労働省、「参考資料>テレワークを巡る現状について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000662173.pdf
・一般社団法人 日本渡航医学会、公益社団法人 日本産業衛生学会「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド第5版」
https://www.sanei.or.jp/images/contents/416/COVID-19guide210512koukai.pdf