慢性腎臓病(CKD)について
毎年3月第2木曜日は「世界腎臓デー」です。
これは腎臓病の早期発見などを訴える取り組みとして、国際腎臓学会などによって提案されたものです。
腎臓病は近年増え続けています。
中でも慢性に経過する慢性腎臓病は、現在およそ1,330万人もの患者がいると言われています。これは成人の8人に1人にあたり、非常に多くの慢性腎臓病患者が存在していることになります。
このため慢性腎臓病は、日本の新たな国民病とも言われています。
今回は慢性腎臓病についてお伝えします。
腎臓のはたらき
腎臓は、背中側の腰より少し高め位置に左右一つずつ存在する、大きさが10㎝程のソラマメ型をした臓器です。
腎臓の重要な働きの一つが、血液中の老廃物や水分、ミネラルなどを濾過し、尿として排出することです。
腎臓は1日に約180ℓもの血液を濾過しています。濾過された血液のうち、体に必要な成分である99%が再吸収され、残りの1%が尿となり排泄されます。
血液の濾過によって、老廃物の排出だけでなく体液量や電解質濃度の調節も行っています。
その他、ホルモンを産生したり、骨代謝へも関与しています。
腎臓の病気
腎臓の病気には多くの種類があり、腎臓自体に問題が生じる「原発性」の腎障害と、腎臓以外の病気が原因となって生じる「続発性」の腎障害があります。
原発性の腎障害では、腎臓に炎症が起こる腎炎が代表的です。続発性の腎障害は、糖尿病や高血圧、高尿酸血症、膠原病などの病気が原因で起こります。
また、病気の進展度合いよって、「急性」と「慢性」に分けられます。
急性の腎障害は、症状が急激に現れ、一気に悪化します。
脱水や低血圧、薬物の影響、咽頭炎などの感染症のあとに起こる急性糸球体腎炎などが原因で起こります。
適切な治療により患者の3割は完全に回復しますが、残りの6割は不完全な回復にとどまりその後慢性腎臓病に移行すると言われています。残り1割は透析や移植等の腎代替療法が必要になります。
慢性の腎障害は、自覚症状がほぼ出ないまま、ゆっくりと腎機能が低下していきます。
自覚症状がないからと言って治療を行わないと、腎障害は徐々に進行し、最終的には透析等が必要となる末期腎不全の状態に至ることがあります。
慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病とは、蛋白尿等の腎臓の障害や腎機能の低下が3か月以上続く状態の総称で、慢性糸球体腎炎や多発性嚢胞腎、糖尿病、高血圧、動脈硬化、膠原病など様々な原因によって引き起こされます。
英語表記「Chronic Kidney Disease」から「CKD」とも言われます。
CKDでは、腎臓の機能が10年~20年といった長い年月をかけて、少しずつ低下していきます。
初期の段階では症状がほとんどなく、貧血や疲労感、むくみ等の症状が出現する頃には病状はかなり進行しています。
ある程度症状が進んでしまうと自然に治ることはなく、そのまま放置してしまうと腎障害は次第に進んでいき、最終的には末期腎不全となり透析や腎移植が必要な状態となってしまいます。
しかし早い段階で治療を行うことで、病気の進行を抑えることが可能です。このためCKDは、早期発見・早期治療を行うことが非常に重要となります。
また腎機能が低下すると、高血圧が悪化し、動脈硬化によって脳卒中や心筋梗塞等の心疾患などの発症リスクも高まると言われています。
慢性腎臓病(CKD)の治療
CKDの治療では、腎機能の低下を抑え、透析療法が必要な末期腎不全の状態になることを防ぐことが主眼となります。
糖尿病など腎機能低下を起こしている原因疾患がある場合は、原因となっている病気の治療をしっかりと行うことが重要です。
また腎機能低下に伴って生じる高血圧や貧血等の合併症がある場合には、その治療も併せて行われます。その他、病気のステージに応じた食事療法や生活習慣での対応を行っていきます。
末期腎不全となった場合は、人工透析や腎移植等の代替療法が行われます。
慢性腎臓病(CKD)の予防のために
CKDは初期には自覚症状がほとんどありませんので、定期健診などの定期的な検査で腎機能をチェックしていくことが大切です。
健康診断では、尿検査(尿蛋白や尿潜血)、血清クレアチニン値、推算糸球体濾過量(eGFR)、腹部超音波等で腎臓の状態を確認することが出来ます。
これらの項目で、要再検査・要精密検査等と判定が出ている場合には必ず受診し、精査するようにしましょう。
また、以下のCKDハイリスク群にあたる方はより注意が必要です。
治療が必要な病気はしっかり治療を行うと共に、肥満の是正や適度な運動、減塩、バランスの取れた食事を心がけ、喫煙されている方は禁煙するという様に、生活習慣での対応も重要です。
CKDのハイリスク群
◆肥満やメタボリックシンドローム ◆高血圧 ◆糖尿病 ◆膠原病 ◆脂質代謝異常症 ◆高尿酸血症
◆尿路結石 ◆腎臓病の既往 ◆腎臓病の家族歴 ◆非ステロイド抗炎症薬などの常用 等
株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子