夏の脳梗塞にご注意を
脳梗塞は、様々な研究から、冬だけでなく夏場も冬と同程度発症することが分かっています。
今回は夏にも注意が必要な脳梗塞についてお伝えします。
脳梗塞とは
脳の血管が詰まることにより脳血流が減少し、脳の神経細胞に十分な酸素や栄養が供給されなくなることで、脳組織の機能が一過性あるいは永続的に低下することです。
⇒ 麻痺等のさまざまな症状を引き起こします。
主な病型
ラクナ梗塞
・脳の奥の部分、細い血管に生じる直径15㎜未満の小さな脳梗塞のこと。
・脳血管の細い部分が詰まるため、限局的な症状である場合が多い。
・無症候性脳梗塞となることもある。
アテローム血栓性梗塞
・脳の比較的太い血管に、動脈硬化やアテローム硬化(※)が起きて、脳の血管が詰まって起きる脳梗塞。
(※)粥状硬化とも呼ばれ、主にコレステロールがプラークと言って粥状に血管壁に塊を作っている状態。
心原性脳梗塞
・不整脈(心房細動)等によって心臓内の血流が滞ることで血栓が生じ、それが脳血管に飛んで脳血管を詰まらせるタイプの脳梗塞。
・およそ2割前後がこの心原性脳梗塞が原因。
脳梗塞の症状
一般的には以下の脳梗塞サイン「FAS」が出た場合は、脳梗塞が強く疑われます。
発症時刻「T」を確認し病院へ!
Face(顔)
・片側の顔がゆがむ。「イー」と言ってもらった際、片側の口角が下がったままとなる。
Arm(腕)
・片側の腕に力が入らない。
・目を閉じて手の平を上にして胸の前に両腕を伸ばし、ゆっくり5つ数えた際、片方だけ腕が落ちている。
・胸の前に腕を上げようとしても片方だけ上がらない。
Speech(言葉)
・ろれつが回らない、言葉が出てこない。
Time(時間)
・脳卒中の症状が出た時間を記録し、すぐに病院へ。
脳梗塞が疑われたら
脳梗塞は片麻痺や感覚障害など、生活に支障をきたす障害を引き起こすので、早期受診・治療がカギ。
脳梗塞のサインが見られたら、躊躇せずに救急車を呼び、病院へ行きましょう。
⇒ 発症4時間半以内「t-PA静注療法(血栓を溶かす治療)」
⇒ 発症8時間半以内「血管内治療(カテーテルにより血栓を除去する治療)」
一過性脳虚血発作(TIA)とは
脳梗塞の症状が出現するものの、数分~1時間程度で後遺症を残すことなく回復する発作で、脳梗塞とは区別されています。
しかし、TIAはその後の大きな脳梗塞発作の前触れ発作とも言われており、この発作が起こった場合は放置をせずに、速やかに脳神経外科等の専門医を受診することが重要です。
脳梗塞を予防するために
脳梗塞の予防
背景にある動脈硬化予防の為に、生活習慣の見直しと、必要に応じ適切な治療を行うことが重要です。
心原性脳梗塞の予防
健康診断の心電図検査や診察、また心房細動の疑いが指摘された場合や、自覚症状(動悸・息切れ)が現れている場合は、必ず循環器科、もしくはかかりつけ医に相談しましょう。
夏の脳梗塞の予防
夏は発汗などによって水分不足になりやすく、血液がドロドロとした状態となり、血栓ができやすくなります。
夏の脳梗塞予防には、脱水を予防することが大切です。以下のポイントに注意しましょう。
- 喉の渇きを感じた時は、すでに体内の水分が不足している状態だと言われています。こまめな水分摂取を心がけましょう。
- 発症リスクは、就寝中~起床後の時間帯にかけて高まるため、就寝前と起床時にコップ一杯の水をとるようにしましょう。
- カフェインが入っている飲み物は利尿作用があます。水や麦茶などのノンカフェイン飲料がお勧めです。
またアルコールを飲む際は、飲みすぎに注意し、チェイサーで水をとるようにしましょう。
株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子