膵臓の病気について
膵臓は消化や血糖の調整など大変重要な役割を担っている臓器です。
膵臓の病気は時に命に関わることもあり、罹患者数も年々増加傾向にあると言われています。
膵臓とは
胃の後ろ側で背中に近いところにある、長さ15~20㎝程の帯状の形をした臓器です。
2つの非常に重要な役割
<外分泌機能>
食物を消化するための消化酵素「膵液(アミラーゼやリパーゼ、トリプシン等)」を分泌
<内分泌機能>
血糖調節を行うインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌
膵臓の病気
膵炎
膵炎は膵臓に炎症が起こる病気で、原因はアルコール摂取が最も多い。
急性膵炎(急激に発症)では40%、慢性膵炎(慢性的に経過)では60%がアルコールの過剰摂取と言われている。次いで多いのが胆石症で、女性の場合は胆石が原因の膵炎が多い。
急性膵炎
膵液に含まれる消化酵素は、十二指腸に流れてはじめて活性化されるが、何らかの原因により膵臓内で消化酵素が活性化することで、膵臓自体を自己消化し強い炎症を起こす。
<症状>
食後や飲酒後に突然上腹部や背中に生じる激しい痛み。痛み以外にも吐気や嘔吐、発熱を伴うこともあり、重症になると意識障害やショック状態となり命に関わることもある。
重症に至った場合の死亡率は10%にも上る。
<治療>
入院での治療が必要で、絶飲食によって膵臓を安静にし、輸液や薬物療法等の治療が行われる。
重症時は、集中治療室で治療が必要。
再発することも多く、一部が慢性膵炎に移行すると言われている。
慢性膵炎
長期間にわたって膵臓の炎症が持続することで、膵臓の細胞に著しい線維化が起こり、膵液や血糖調整ホルモンを分泌する機能も徐々に失われていく。病気は進行性で治癒が難しいと言われている。
膵がんの原因となることがあり、慢性膵炎があると膵がんのリスクが12倍にも高まる。
<症状>
食べ過ぎや高脂肪食品の摂取、飲酒後に出現する腹痛発作や、上腹部を押した時の痛み、倦怠感等。
腹痛のために食事量が減少し、膵液の分泌不良で消化不良が起こることで、栄養障害や体重の減少も見られる。また血糖調整ホルモンの分泌も減少してくるため、糖尿病を発症する。
<治療>
慢性膵炎を起こしている原因や、病期、重症度に応じて生活指導や食事療法、薬物療法が行われる。
糖尿病を発症した場合は、糖尿病の治療も必要となる。
膵がん
罹患者数・死亡者数ともに年々増加し、2019年のがん死亡原因でも第4位となっている。
自覚症状は初期の段階ではほとんど見られず、早期発見が非常に難しいがんとされている。
<がん発見のきっかけ>
食欲不振や腹痛、腹部膨満、腰背部痛、黄疸や血糖値の上昇等。
診断された患者の中で手術が可能なのは約20%で、80%の患者は既に切除ができない状態で発見される。
<治療>
切除可能と判断された場合は手術が行われ、手術が難しい場合や、手術療法と併用して化学療法や放射線療法が行われる。
膵臓の病気を予防するために
膵炎、膵がんともに、その発症リスクとなるのが過度の飲酒や喫煙、肥満、高脂肪食、遺伝的要因だと言われている。
特に過度の飲酒は大きなリスク要因。
純アルコールで48gを毎日摂取すると、適正飲酒量を摂取する場合と比較して膵炎の発症リスクが2.5倍程度となると言われている。
日本酒2~3合以上、ビールロング缶2~3本以上の飲酒習慣がある方は要注意!
- 飲酒は適正飲酒量内(日本酒1合、ビールロング缶1本)で楽しみましょう。
- 喫煙も慢性膵炎や膵がんの危険因子。禁煙外来を上手に利用し、卒煙にチャレンジ!
株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子