中性脂肪について
前回お伝えした「コレステロール」に続き、今回はもう一つの血中脂質検査項目である「中性脂肪値」についてお伝え致します。
中性脂肪とは
中性脂肪は肉や魚、食用油等の食品中の脂質や、体脂肪の大部分を占める物質です。
中性脂肪は「体内にエネルギーを貯蔵する」という大切な役割を担っています。
生命維持のためには主に糖をエネルギーとして利用していますが、中性脂肪はこの糖が不足した場合に利用されるエネルギーとなります。
糖や蛋白質のエネルギー量 1gあたり4kcal
中性脂肪のエネルギー量 1gあたり9kcal
少ない重量で大きなエネルギーを持っている中性脂肪は、エネルギー貯蔵という面では非常に優れた性質を持っています。
但し、利用されなかった中性脂肪は体脂肪として蓄えられ、肥満から生活習慣病を引き起こすので注意が必要です。
中性脂肪の基準値とは
脂質異常症の診断基準 《高トリグリセライド(中性脂肪)血症の基準値》
①「空腹時(食後10時間以上経過)150mg/dl以上」
②「非空腹時175mg/dl以上」※1
※1 非空腹時の中性脂肪基準値が追加された理由
食後の中性脂肪値が高いと、動脈硬化の強い危険因子となる「小型化LDLコレステロール」も増加する。
小型化LDLコレステロールは、通常サイズのLDLコレステロールよりもサイズが小さいため、血管のすき間に入り込みやすく、長時間血液中にとどまる性質を持つとともに、酸化もされやすいため動脈硬化を特に促進させやすい。
このため、たとえ空腹時の中性脂肪値が低くても、食後の中性脂肪値が高い場合は、心筋梗塞や脳梗塞等のリスクが高まると考えられたため。
中性脂肪が高くなる原因
① 食事の影響
- 脂質の多い食事を夜遅くに食べた時 (10時間以上絶食したとしても血液中の中性脂肪値が高いままのケースがある)
- 炭水化物(糖質)等の脂質以外のエネルギーの摂り過ぎ
- アルコールの過剰摂取 (代謝の過程で中性脂肪を作り出してしまう)
② 遺伝
中性脂肪が高いとどうなるのか
(1,000mg/dlを超えるような高値になると…)
- 急性すい炎のリスクが高まる。
- 動脈硬化の危険因子となる。(動脈硬化を予防するHDL(善玉)コレステロールの低下を伴うことが多いため。)
中性脂肪値を下げるために
健診で中性脂肪値が要受診との判定となった場合は、受診し対応を医師に相談しましょう。
脂質以外に動脈硬化を起こすリスクがないかもあわせてチェックすることも大切です。
中性脂肪値の正常化のためには、運動や食事療法、アルコール制限等の生活習慣改善が基本となります。
中性脂肪値は、コレステロール値の異常よりも生活習慣改善による数値の低下が期待できます。
運動療法
中強度(話ながらでも継続できる程度の運動強度)の運動を1日合計30分以上(10分×3回の細切れでもOK)、毎日、少なくも週3日は実施。数か月以上継続して実施することが大切です。
お勧めの運動:ウォーキング、速歩、水泳、サイクリング等の有酸素運動。運動をする余裕がない方は、掃除や子供と遊ぶ等、身体活動量の増加を目指しましょう。
食事療法・アルコール制限
脂質や糖質を控え、エネルギーの摂り過ぎに注意しましょう。
青魚に含まれるDHA・EPA、アマニ油等のn-3系多価不飽和脂肪酸を意識して摂取しましょう。
また食物繊維を多く含む、野菜や海藻、大豆製品等の摂取も有効だと言われています。アルコールは1日の適正飲酒量を目安に楽しみましょう。
※適正飲酒量:缶ビール500ml缶1本、日本酒1合、缶チューハイ(アルコール7%)350ml缶1本、ワイングラス2杯、ウィスキーダブル1杯
株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子