黄熱 – フランス領ギアナ
Disease outbreak news 2018年8月24日
2018年8月14日、世界保健機関(WHO)は、WHOヨーロッパ地域事務局からフランス領ギアナで確認された黄熱症例についての情報を受け取りました。2018年8月10日、アルボウイルスに関する国のリファレンスラボ(National Reference Centre)のギアナパスツール研究所は、ギアナ在住のワクチン接種を受けていない47歳のスイス人男性について、検査室で確認された黄熱の感染を土着のもの(その土地で獲得されたもの)だと報告しました。2018年4月以来、この症例はフランス領ギアナ、Rouraコミューンの森林地域に住んでいます。2018年8月4日、彼はインフルエンザ様症状を発症し、8月8日、劇症肝炎を発症して、フランス領ギアナ、カイエンヌの病院に入院しました。2018年8月9日、フランス、パリへ移送され、肝臓移植を受けました。
疫学的および昆虫学的調査が実施されており、患者の宿泊施設の地域で新たな症例は確認されていません。追跡調査の間、症例患者の接触者はヒト以外の霊長類の異常な死亡の報告はなかったということを明らかにしました。
国のリファレンスラボ(National Reference Centre)で逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)試験を実施し、黄熱ウイルスが陽性でした。
公衆衛生上の取り組み
フランス領ギニアの保健当局はいくつかの公衆衛生対策を実施しています:
・リスク管理ゾーン(宿泊施設、保健医療施設、空港)の周辺では、昆虫媒介の管理対策が強化されています。
・黄熱に対する意識を高めるために、医療従事者に情報が広められています。
・黄熱の予防対策に関するメッセージは、地域の認識と予防接種の促進のために、マスメディアキャンペーン(報道発表、ラジオ)を通じてフランス領ギアナで発信されています。
・旅行者の予防接種の管理が強化されています。
WHOのリスク評価
黄熱は、急速に広がり、免疫されていない集団において重大な公衆衛生上の影響を引き起こす可能性がある急性ウイルス性出血性疾患です。予防接種は感染を防ぐ最も重要な手段です。
フランス領ギアナは黄熱伝播の危険性があると考えられており、1歳以上の旅行者には黄熱予防接種証明書が要求されます。フランス領ギアナでの予防接種の実施率は最適(80%以上)です。しかし、いくつかの集団(非合法の鉱山労働者等)では接種率が最適ではない可能性があるため、これらの集団は黄熱感染の危険性があります。
WHOからのアドバイス
黄熱の伝播の危険にさらされている地域を訪問する、または住むことを計画している旅行者へのアドバイスは以下のとおりです。
・旅行の少なくとも10日前に黄熱に対する予防接種を受けます。黄熱ワクチンの単回投与は、黄熱に対する予防を生涯にわたって保証するには十分です。ワクチンの追加接種は必要ありません。
・蚊に刺されることを防ぐための措置の観察
・黄熱の徴候と症状の認識
・旅行中および黄熱の危険にさらされている地域、特に地域の伝播サイクルが確立している国(すなわち、感染能力のある媒介昆虫が存在する場所)を旅行中に、または帰国に際してヘルスケアを求める行動の促進。
この報告書は、黄熱予防接種の必要性に対する意識を維持することの重要性を示しています。特に黄熱伝播のための好都合な生態系がある地域ではそうです。
したがって、WHOは、すべての潜在的な流行地域への旅行者の予防接種状態の管理を強化するよう、加盟国に思い起こさせます。ウイルス血症状態で帰国した旅行者は、感染能力のある媒介昆虫が存在する地域では、黄熱伝播の地域の循環を確立するリスクを負う可能性があります。予防接種を受けられないという医学的根拠がある場合は、適切な当局の認定を受けなければなりません。
WHOは、この事象に対して入手可能な情報に基づいて、フランス領ギアナに対して、一般的な旅行や貿易の制限を適用することを推奨していません。
出典
Yellow fever – France – French Guiana
Disease outbreak news, WHO 24 August 2018
//www.who.int/csr/don/24-august-2018-yellow-fever-french-guiana/en/
参考
◆参考1
Going to French Guiana : yellow fever vaccination
Embassy of France in Stockholm, Sweden
https://se.ambafrance.org/Going-to-French-Guiana-yellow-fever-vaccination
WHOからの情報では、フランス領ギニアへの入国に際して、黄熱に対する予防接種証明書が要求されるのは、1歳以上とされていますが、在スウェーデン・フランス大使館によると、『9ヶ月以上』のすべての訪問者とされています。
◆参考2
FRENCH GUIANA
Recommended vaccinations
The Institut Pasteur, France
https://www.pasteur.fr/en/medical-center/prepare-your-travel/french-guiana
同じくWHOからの情報では、黄熱ワクチンの追加接種は不要とされていますが、フランス公衆衛生評議会(HCSP: the French High Council for Public Health)は以下の場合について、黄熱ワクチンの2回目の接種を推奨しています。
(1)2歳未満で予防接種を受けた小児:6歳以降に黄熱の流行地域へ渡航する場合
(2)初回予防接種が妊娠中であった女性、HIV陽性者、およびHCSPの報告書に記載された条件で予防接種を受けた免疫不全患者:初回接種から10年後
(3)10年以上前に黄熱ワクチン接種を受けた人々:黄熱の発生が報告されている国へ渡航する場合
厚生労働省検疫所FORTH HPより引用
https://www.forth.go.jp/topics/20180906.html
***************************************************************************
労働安全衛生規則45条の2には、労働者を海外に6カ月以上派遣する者については派遣前後の健康診断の実施が事業主に義務づけられています。 6月以上海外勤務した労働者を帰国させ、国内の業務に就かせるときも、健康診断を行わなければなりません。
赴任前は、時間も限られ準備等に忙しくなりますので、早めに企業の産業医に海外派遣に関する健康管理についての意見を確認したり、健康診断による健康チェッ クを行いましょう。
海外に従業員を派遣している企業は、赴任前後においての健康に関する教育、情報提供を行う義務があります。
感染予防と事前のワクチン接種、医療保険制度、赴任先の医療機関リスト、メンタルケアなどの注意点について健康対策を行いましょう。 産業医紹介ナビでは、海外赴任前後の従業員の健康確保に関する教育、指導を行える産業医をご紹介致します。お問い合わせください。