中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)

中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV) – 英国(UK) 5例目の輸入症例

Disease outbreak news 2018年8月31日

2018年8月22日、英国(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)の国際保健規則(IHR 2005)に基づく連絡窓口(National Focal Point)は、WHOに対して、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染の発生を報告しました。患者は英国を訪れていたサウジアラビア王国の居住者です。

この患者は、80~89歳の男性で、基礎疾患として慢性疾患を有していました。彼はサウジアラビア王国におけるMERS-CoV患者との接触歴はありませんでしたが、発症前にラクダとの直接の接触歴がありました。

8月16日、患者は症状がありましたが、サウジアラビア王国から航空機で英国のマンチェスターへ、次いで車でリーズへと旅行していました。患者はリーズで隔離されて治療を受け、リバプールの特別な感染症専門病院に移送されました。患者の状態は改善され、引き続き隔離されています。

検査室での試験は、イングランド公衆衛生(PHE)バーミンガム研究所によって実施され、その結果はMERS-CoVについて陽性でした。これらの結果は英国のリファレンスラボ(national reference laboratory)によって確認されました。

これは英国で診断されたMERS-CoVの5番目の症例であり、前の4例は2012年と2013年に診断されました。

公衆衛生上の取り組み

英国当局は、2018年8月22日にサウジアラビア当局に速やかに通知しました。

英国の公衆衛生当局は、コミュニティ、家族、および医療施設における患者との接触者を確認し、フォローアップしています。患者が乗った飛行機の3列以内の席に座った乗客らには情報が提供されています。

サウジアラビア王国の公衆衛生当局は、病気に対する直接的な家族接触をスクリーニングしました。全ての鼻腔咽頭サンプルは、PCR検査により、MERS-CoVについて陰性でした。農業省の動物衛生部門は、サウジアラビア王国におけるラクダの曝露を調査しています。

WHOのリスク評価

感染した患者に防護されていないケアを提供するなど、密接な接触がない限り、ウイルスはヒトからヒトへ簡単には移しません。MERS-CoVによる感染は重度の疾患を引き起こし、高い罹患率および死亡率をもたらす可能性があります。コミュニティにおいて獲得されるMERS-CoVによるヒトの感染症は、感染したヒトコブラクダとの直接的または間接的な接触から生じます。またMERS-CoVは、感染した患者との無防備な接触を通じてヒト間で伝染することもできます。これまでに観察された非持続的なヒトからヒトへの感染は、主に医療施設で発生しています。適切な感染予防および管理措置を講ずることで、医療施設におけるヒトからヒトへの感染を阻止することができます。
この追加の事例の通知は、WHOのMERS-CoVに関する全体的なリスク評価を変更しません。WHOは、中東からMERS-CoV感染の症例がさらに報告されることを予期し、また、感染した動物や畜産物に曝露された後(例えば、ヒトコブラクダとの接触の後)または、患者との接触(例えば、医療施設で)、感染した個人によって、散発的な症例が他の国に持ち出され続けるでしょう。今日まで、Hajjに関連したヒトMERS-CoV感染はありません。
WHOは影響を受けている加盟国と連絡を取り合うために協力しています。追加感染事例は進行中のこの輸入症例に対する公衆衛生上の取り組みの一部として認識され、全般的に公衆衛生上のリスクは変わらず、低いままです。
WHOは疫学的状況を監視し、最新の入手可能な情報に基づいてリスク評価を実施しています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現在の状況と入手可能な情報に基づき、すべての加盟国に対し、急性呼吸器感染症のサーベイランスを継続し、いかなるまれな症例でも慎重に検討するよう勧めます。WHOは、MERS-CoVが循環している国への最近の旅行履歴、ヒトコブラクダとの接触、医療施設への訪問を含む曝露情報の収集を推奨しています。
動物に触れる前後の定期的な手洗いや病気の動物との接触を避けるなどの一般的な衛生措置を守らなければなりません。食品衛生習慣を遵守しなければなりません。人々は生のラクダのミルクやラクダの尿を飲むこと、または適切に調理されていない肉を食べることを避けるべきです。
MERS-CoVが医療施設に広がる可能性を防ぐためには、感染予防と管理策が不可欠です。他の呼吸器感染と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的であるため、早期にMERS-CoV患者を特定することは常に可能ではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、常にすべての患者に標準予防策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の患者にケアを提供する場合は、標準予防策に飛沫予防策を追加する必要があります。MERS-CoV感染の可能性のある、または確認された症例を看護する際には、接触予防策および目の保護を追加すべきです。エアロゾル生成を伴う処置を行う際には、空気感染の予防策を適用する必要があります。
MERS-CoVのコミュニティおよび家族の意識とその家庭における予防手段は、家族内の伝播を減らし、コミュニティにおける集団発生を予防することができます。
糖尿病、腎不全、慢性肺疾患または免疫不全のような基礎疾患を有する人々は、MERS-CoV感染による重篤な疾患のリスクが高いと考えられています。これらの人々は動物、特にラクダとの密接な接触を避けるべきです。
WHOはこの事象に関して入境ポイントにおける特別なスクリーニングを勧告しておらず、現在、旅行や貿易の制限を適用することを推奨していません。
2018年7月現在、2012年以降に報告されたMERS-CoVの検査室で確定された症例の全世界の総数は、サウジアラビア王国から報告された1865人を含む2241人です。すべての症例の中で、少なくとも795人のMERS-CoV関連死が生じています。
全世界の数字は、IHR(2005年)に基づき、現時点までにWHOに報告された検査室で確定された症例の総数を反映しています。報告された死亡者の総数には、影響を受けている加盟国のフォローアップを通じてWHOが現在認識している死亡者も含まれます。どちらも感染と死亡の実際の数を過小評価する可能性があります。

出典

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
Disease outbreak news, WHO 31 August 2018

//www.who.int/csr/don/31-august-2018-mers-united-kingdom/en/

 

厚生労働省検疫所FORTH HPより引用
https://www.forth.go.jp/topics/20180905.html

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労働安全衛生規則45条の2には、労働者を海外に6カ月以上派遣する者については派遣前後の健康診断の実施が事業主に義務づけられています。 6月以上海外勤務した労働者を帰国させ、国内の業務に就かせるときも、健康診断を行わなければなりません。

赴任前は、時間も限られ準備等に忙しくなりますので、早めに企業の産業医に海外派遣に関する健康管理についての意見を確認したり、健康診断による健康チェッ クを行いましょう。

海外に従業員を派遣している企業は、赴任前後においての健康に関する教育、情報提供を行う義務があります。

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