企業の安全配慮義務について

過酷な労働環境に対する懸念の声が高まる一方で、「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」(平成26年3月)が国会に提出されました。改正が行われる一部として、化学物質管理の見直しや企業の従業員に対する安全配慮義務が挙げられます。
ここでは「企業の安全配慮義務」に焦点を当ててみたいと思います。

安全配慮義務の歴史的背景

安全配慮義務は当初、主に工業(製造業)など、薬品や重機などの危険物を取り扱う職場で問題になっていたものです。当初の安全配慮義務が問題視された事案に注目してみると、「遮断機」や「有機薬品」など、「身体的危害」に関する事案が多く見られます。

しかし近年では、このような身体的危害に加え、労働環境における精神衛生についても注視されるようになりました。そのため、法律解釈の質的変化が生じ、現在では「事業者は労働安全衛生法の定めにより、労働者の身体的・精神的健康と安全につき配慮を徹底しなければならない義務と責任がある」と解釈されるようになりました。

安全配慮義務違反になるポイントとは

予見可能性

予見可能性とは「事故が起こることを事前に予測できたか」という観点から判断されます。相当の注意力と判断力をもってすれば事前に事故の可能性を予測でき、その対策を講じることができたにも関わらず、それをしなかったことによって事故が発生してしまった。このようなときに、安全配慮の徹底を怠ったと解釈されます。

結果回避可能性

結果回避可能性とは「労働者の生命や健康に何らかの損害が生じることが予測できた場合に、それを回避する手段を講じたか」という観点から判断されます。相当の注意力と技術力をもってすれば回避できたにも関わらず、何らかの過失によってそれを回避することができなかった、という場合に責任が発生すると考えられています。

ストレスチェック制度について

法改正により、メンタルヘルス対策の一環としてストレスチェックの義務化が決定されました。
この制度では、初めに医師または保健師による検査の場が設けられ、現在のストレス状態の判定をします。この時、高ストレス状態だと通知された労働者のうち、希望した方へ、医師による面接指導を実施するというものです。
そしてその結果、医師の意見を聴いたうえで然るべき措置を講じるかを判断します。ストレスチェック制度は、従業員数50人以上の全ての事業所が対象となります。

 

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