産業医とのトラブルが起きるケースとは?対処法&回避方法を徹底解説

従業員数が50名以上の企業で専任が義務付けられている産業医。従業員数が増加した、労働環境をよりよくしたいなどの理由から選任を検討している人事担当者の方もいるでしょう。導入によるメリットが多い産業医ですが、中にはトラブルに発展するケースもありますので、万が一トラブルが起きた場合の対処法や、正しい選任方法についても知っておきましょう。

産業医の役割と求められるスタンス

■■企業における産業医の役割とは

産業医の役割とは、従業員の心と体の健康を維持・改善することです。従業員が健康的に働けるようになるということは、社会の士気を高めること、業務効率を改善することにも繋がります。ひいては企業の業績がアップする可能性も高まることから、産業医の真の役割とは、従業員の健康を維持・改善することによる経営促進だと言えるでしょう。

■■産業医に求められるスタンスとは

産業医に求められるスタンスは、企業と従業員に対して中立・公平であることです。企業・従業員の双方に対して最善の提案をするためには、どちらかに偏ってはいけません。企業全体の力を高めていくためには、「医学」という専門的な知識を用いて、中立的な立場から公平に判断を下すというスタンスが重要です。

産業医とのトラブルはどんなケースで起きる?

企業にとって重要な役割を担う産業医。しかし、産業医の中には前項でご紹介したようなスタンスを欠き、次のようなトラブルを招くケースもあります。

・主治医と産業医の判断が食い違い復職が滞る
・厳しい言葉遣いで従業員の心の症状が悪化する
・医学的根拠より主観を重視した判断をする
・職場巡回の回数が少ない

ほとんどの産業医は自らの業務をしっかりと遂行するため、上記のようなトラブルが起きることはごくまれです。しかし、トラブルが起きるケースを確認すると、トラブルの原因として全般的に言えることは「医師の人間性によるところが大きい」と言えます。

主観を重視した判断をすることにより、主治医が「復職可能」としていても従業員の復職を認めなかったり、言葉遣いの厳しさで問題へと発展しがちですが、一般的な良識を持っている医師であれば問題となるような対応は行いません。

産業医とトラブルが起きてしまった時の対処法

万が一、社内に設置している医師とトラブルに発展してしまった場合は、次のように対処を行いましょう。

主治医との意見交換をしてもらうこと

もし主治医と産業医の判断が食い違うようなら、主治医との意見交換をしてもらうようにしてください。トラブルの一例でもご紹介したように、主治医が復職可能と判断しているにも関わらず、産業医が復職不可と判断するケースもあります。主治医と意見が食い違うケースでは、意見交換により症状や回復具合をより詳しく認識してもらえれば、トラブルが解決する可能性が高まるでしょう。

異動や配置変更などを検討する

異動や配置変更などを検討し、負担の少ない業務による復職の可能性を探ることも大切です。産業医が「復職不可」と判断した理由が業務内容であれば、負担の少ない業務への配置変更を行った場合の見解を伺うことも必要でしょう。負担の少ない業務に配置変更をすることにより復職可能となり、大きなトラブルになる前に解消できる可能性もあります。

産業医を選ぶ際の注意点

それでは、社内の医師を選ぶ際に注意するべきポイントについてご紹介します。

実績が豊富な産業医紹介サービスを利用すること

まずは、紹介実績が豊富な産業医紹介サービスを利用することが注意点です。企業だけで選任するよりも質の高い医師が見つかる可能性が高くなることに加え、企業の現状を把握してもらった上で紹介を受ければ、企業に最も適したトラブルの少ない人材と出会えるでしょう。

産業医の料金相場を確認しておくこと

事前に、産業医の料金相場を確認しておくことも大切です。料金相場は従業員の人数により異なり、次のようになります。

従業員数 料金相場
~50名 75,000円
50~199人 100,000円
200~399人 150,000円
400~599人 200,000円
600~999人 250,000円

上記の料金相場はあくまでも目安ですが、契約した後に予算を超える料金を請求されないために、一般的な相場を把握しておくようにしてください。

目的に応じた産業医を選定すること

産業医を設置する目的に応じて、適切な医師を選定することも必要。設置する目的は、従業員の体調管理や危険事業を実施する従業員への健康管理がメインとなりますが、精神面を重視するか、身体面を重視するかにより医師の選び方も変わってくるはずです。目的にあった医師を選定しましょう。

産業医とのトラブルを起こさないための産業医の選定方法

社内の医師を選ぶ際には基本のポイントに加え、次のようにトラブルへと発展しにくいよう選定することも必要です。

企業の方針を考慮するスキルを持つ産業医を選ぶこと

トラブルを避けるためには、企業の方針や状況を考慮してくれる産業医を選ぶようにしてください。医師の中には、自身の判断に自信を持っており、企業の方針とは異なる提案をしてくる方もいます。企業が求めていることを汲み取り、意向に沿った提案をする医師を選ぶべきです。

主体性をもつ産業医を選ぶこと

産業医を選任する際には、主体性の有無を確認することも大切です。医師という職業に就いている方は企業の仕組みに対して知識に乏しい場合も多いため、社会の仕組みや企業の人事に関して学習する意欲のある、主体性を持った人物を選びましょう。

面接で医師の姿勢や判断力を確認すること

産業医選定の面接では、質問により医師の姿勢や判断力を確認することがトラブル回避に欠かせません。最も効果的な質問は「あなたならどう判断されますか?」と問うことです。例えば、主治医と産業医の判断が異なる場合、企業の希望と医師の意見が一致しない場合などを例として、「あなたならどう判断されますか?」と質問すれば、事前に医師の姿勢や判断力を確認できるようになります。

トラブル数の少ない女性産業医を選ぶこと

トラブルを回避するためには、女性産業医を選ぶこともおすすめです。女性は一般的にコミュニケーション能力が高く、相談しやすい雰囲気作りに長けているだけでなく、女性特有の悩みに対応するスキルも持ち合わせています。

女性産業医を選びたいという場合は、女性医師を多く保有している「メディエイト」による紹介を検討されてみることをおすすめします。

産業医の選定で重要なことはトラブルを避けること

産業医の設置を検討されているなら、選定の際には「トラブルを回避できること」を重視して選ぶようにしてください。

ご紹介したように、医学的根拠ではなく主観で判断したり、パワハラと受け取られかねない発言をしたりする医師もまれにいます。言動に問題がある医師を社内に設置すると従業員から裁判などを起こされかねないため、選定の際の注意点を把握して、自社にとって適切な産業医をい選任することが何よりも重要です。