より良い産業医はどうやって探すべき?賢く選任する方法

近年、産業医の必要性が高まっています。それは、近年メンタルヘルス問題やコロナ禍など深刻になっているからでしょう。事業者が少しでも健康に、安心安全に働けるように、各企業に医師の存在はとても重要です。ただ、すべての企業が選任できるわけではありません。選任が義務づけられているのは、あくまで事業者数が50人以上の場合のみです。また、多ければ多いほど必要性が高くなります。

ここでは、産業医の基礎知識をはじめ、種類やどうやって探すのか、契約方法なども含めて紹介しています。「自身の企業に必要」と分かった場合、すぐに対応できるように正しい知識を学んでおきましょう。

「産業医ってなに?」

事業者の健康管理等を行う医師のことをいいます。事業者がいかに健康な状態で作業が行えるように、万が一のときは医療機関を紹介したり、正しい指導や助言を行ったりするのが主な特徴になります。一般の医師と異なるところは、診断や処方がないことです。あくまで事業の規模に応じて、適切な判断を行うのが産業医の仕事になるでしょう。

「産業医の種類は何がある」

ひと口に産業医といってもさまざまです。また、事業者が多いほど産業医の仕事も増えます。そのため、事業の規模によって選任する人数や専属などが変わってきます。ここでは、産業医の種類について紹介します。

「嘱託産業医」

常時50人以上999人以下で、嘱託産業医が選任できるようになります。嘱託産業医は非常勤の産業医のことで、普段は医師として働いているのが特徴です。そのため負担は少なく、月に数回のペースで事業者の健康管理を行います。

普段は医師として働いているのでさまざまな知識を持っており、多くの人と関わることから適切な判断ができます。産業医としての仕事は少ないのですが、だからこそ事業者の小さな体調の変化にも気づきやすく、早い段階で医療機関へ紹介することが可能になるでしょう。
ただ一方で、非常勤なので月数回しか訪問しないため、面談日や時間が限られていたり、巡視に時間がかかる場合はデメリットになってしまいます。

「専属産業医」

常時1000人以上の場合と500人以上の有害業務に就いている事業が選任できます。要するに、事業者の人数が多いほど、こちらが選任されることになります。そのため、場合によっては2名以上選任されることもあります。嘱託とは違い常勤なので、週5日フルタイムで働く医師も少なくないでしょう。

基本的に専属産業医として毎日働くため、そこの事業者でもあります。常に事業者と接しているので正しい健康管理を行いやすく、専門知識も豊富です。

「産業医の探し方は?」

事業者が安心して仕事ができるように、常に健康管理を行うのが産業医です。では、どうやって探すのでしょうか。先ほども説明したとおり、産業医は「嘱託」「専属」に分類されます。ここでは、よくある探し方について紹介します。

「病院または健診団体を利用する」

一般的には、定期健康診断を依頼している病院や健診団体を利用します。もっとも短いルートで見つけられるので、急いでいる方におすすめです。また、トータルコストが安くリスクも低いので、安心して相談できるのも良いでしょう。ただ契約に対応していないところもあるので、しっかり確認しておきましょう。

「地域の医師会に相談する」

事業者が少ない場合は、地域の医師会がおすすめです。医師会は各地域にあり、さまざまな医師が登録しているので比較的見つけやすいでしょう。ただし、紹介ができない医師会もあり、採用する担当者が不在の場合は交渉までに時間がかかる場合があります。そのため、急いでいる方にはあまりおすすめできません。

「医師紹介会社を活用する」

他の方法よりも質の高い産業医を見つけやすい点ではメリットですが、契約する場合は紹介手数料がかかってしまうため、コストがかかります。しかし、事業に合った医師を見つけられるので、能力の高い産業医を探している方や、雇用形態や報酬などの相談もしたい方にはおすすめです。ただ紹介会社によっては対応していない場合もあるので、時間や手間はかかってしまうかもしれません。スムーズに見つけるには、産業医紹介の経験が豊富な紹介会社を選ぶことです。

他にも、自社の人脈から探す方法もあります。人脈に自信がある事業は、この方法で探してみるのも良いでしょう。

「産業医を選ぶ際のポイント」

さまざまな探し方があるため、どの方法が一番時間や手間をかけずに済むのかわからないという方もいるでしょう。選ぶときのポイントを知っておけば、比較的簡単に見つけることができます。また、より質の高い産業医も見つけられるので、ぜひ参考にしてみてください。

「産業医としての経験値が高い」

せっかく人材を見つけられても、経験値が低いと巡視や面談などに時間がかかってしまいます。医師によって能力はさまざまですから、より質の高い人材を見つけるためには、「経験値が高い」ことが重要になります。経験値が高ければリスクも軽減させることができますから、安心して事業者の健康管理等を行ってもらえます。

では、どのようにして経験値の高さを判断すれば良いのでしょうか?ポイントは「経験年数」「実績」「対応できる範囲」です。経験年数や実績があるほど安心ですし、対応できる範囲が広いほど信頼できます。特に近年は、事業者のメンタルヘルス問題が深刻になっていますから、そういった面にきちんと対応できる人材が求められます。

「産業医との契約の仕方」

選任するときは、契約が必要です。一般的に「業務委託契約」と「雇用契約」の2つがありますが、同じ契約でもそれぞれ内容が異なります。スムーズに契約するためにも、契約形態をしっかり理解しておきましょう。

「業務委託契約」

どこで契約をするかによって業務委託契約になる場合とそうでない場合があります。基本的に紹介会社経由で見つけた場合はこの方法での契約になりますが、採用支援の場合は雇用契約になります。業務委託契約の特徴は、業務内容に応じて報酬を支払うことで、決まった業務以外は行いません。また紹介会社が介入しているので、比較的事業者の要望を伝えやすいといったメリットがあります。

「雇用契約」

雇用契約は、いわゆる医師と会社が直接契約する方法です。先ほども述べたように、紹介会社を利用しても採用支援の場合はこのケースになりやすく、選任経験があるほど雇用契約のほうが良いと言われています。もう少しわかりやすく言うと、専属の場合は雇用契約を、嘱託の場合は業務委託契約になることが多いでしょう。

契約時には、「産業医選任報告書」「医師免許コピー」「労働安全衛生規則第14条第2項であることを証明するもの」、これらの書類が必要になります。更新は、業務委託契約と雇用契約で異なります。雇用契約は契約書に従い、業務委託契約は1年ごとの自動更新がほとんどです。紹介会社を通しているので、不満がある場合は直接会社の担当者に相談してみてください。

「探し方を知ってより優秀な産業医を見つけよう」

さまざまな探し方があるため、どうやって探すかわからない人は、今回紹介した方法がもっとも一般的になります。ただ紹介会社や医師会など、対応していないところもありますから、数ヶ所から探すことをおすすめします。より質の高い人材を見つけるためにも、入念に確認して、リスクの少ない方法を試してみてください。