産業医が企業内の健康診断で果たす役割や対応内容を解説

健康診断後、健康を維持するためには産業医の指導や判断にきちんと耳を傾ける必要があります。そうすることで症状の悪化を防いだり、従業員のパフォーマンスを維持することができるようになります。ここでは、そんな産業医による健康診断後の対応についてさまざまな視点から解説しています。

「産業医に健康診断結果を提出すべき理由」

企業に所属していれば、健康診断はほぼ義務付けられているといっても良いでしょう。健康診断では自分では気づかない不調もわかるので、病気を早期発見することができます。健康診断の結果は産業医にも提出する必要がありますが、その理由は一体どういうものなのでしょうか?

「法律で定められている」

産業医に健康診断の結果を提出するのは、そもそも法律で定められています。そのため、産業医を選任している企業では、必ず提出が求められます。産業医がいない企業の場合でも、地域産業保健センターの窓口で医師の意見を聞くことができるので利用してみてください。

万が一健康診断の結果に異常があった場合は、産業医が対応することになります。通常勤務が難しい場合は、休職になる可能性もあるでしょう。

「従業員の健康状態を把握するため」

健康診断の結果は、従業員の今の健康状態を把握することが可能になります。産業医がいる企業であれば、健康診断の結果に異常があった場合は面談が行われ、メンタルヘルスケアを実施することになります。健康状態に異常がなくても、メンタルヘルスによって不調が出ているケースもありますから、産業医に診断結果を提出することで病気の早期発見へと繋がるでしょう。

「正しい指導や判断ができる」

健康診断を行うことで自分では気づかない不調が明るみになりますが、それだけでは改善できません。しかし、産業医がいれば正しい指導や判断を行ってくれるため、症状の悪化を防ぐことができるでしょう。

「産業医が行う健康診断への対応内容」

健康診断の結果を産業医に提出することで、内容に沿った指導や判断を行ってくれます。ここでは健康診断への対応内容について解説します。

「通常勤務」

1つ目は「通常勤務」です。通常勤務とはその名のとおり通常の勤務で良いもので、仕事に支障が出るような問題ではないという意味になります。就業上特に意識しなければいけない内容もないため、今までどおり仕事ができます。

「就業制限」

2つ目は就業制限です。一部の勤務に制限がある状態で、心身への負荷を軽減するためにさまざまな措置が行われます。たとえば、長時間労働による不調であれば時間短縮や時間外労働などの制限が該当します。勤務で負荷がかからないようにするため、場合によっては作業の転換や就業場所の変更が行われることもあるでしょう。

「要休業」

3つ目は、休業が必要な場合の対応です。療養が必要になるため、本人の意思とは関係なく休業が求められます。休業期間は健康状態によって異なりますが、復職する際も産業医との面談が必要になるため、自分の意思で復帰することはできません。

このように、産業医は健康診断によって主に3つの対応を行います。自覚がない不調であっても、健康診断で異常が出た場合は産業医との面談で通常勤務・就業制限・要休業のどれかが設けられますので、念頭に置いておきましょう。

「健康診断で産業医が行う就業判定とは」

産業医は健康診断の結果を見て1~8まで区分します。ここでは医学的な判定について解説します。

「就業判定とは」

健康診断において異常があった場合にどのように措置するか産業医が判断します。なぜ就業判定が必要なのかというと、健康状態が悪いまま勤務しても、周囲に迷惑をかけたりパフォーマンスが低下したり、企業としての存続に大きな影響を与えてしまうからです。産業医は健康診断の結果によって先ほども述べた通常勤務・就業制限・要休業などを判断することになります。

「診断区分」

診断区分には下記の8つがあります。

診断区分1:異常なし
診断区分2:有所見健康
診断区分3:要観察
診断区分4:要管理
診断区分5:要再検査
診断区分6:要受診(精査)
診断区分7:要治療
診断区分8:治療中

「面談の有無について」

・面談が必要な場合
通常勤務でも問題はなくても、食生活や運動指導などを受けたい場合も面談が可能です。また、主治医の医療を受けている場合は治療状況を把握しながら産業医と主治医によって対応します。基本的に産業医による対応は健康診断の結果で異常があった場合になります。しかし前述したように、特に通常勤務に問題がなくても指導を受けたい場合は対応してもらえます。当然ですが、就業制限や要休業が必要な場合は面談が必須になります。

・面談が不要な場合
特に受診の必要性がない場合は面談不要です。自己管理に任せるという形で、受診する場合もあるでしょう。判定の方法は「不要」「要自己管理(受診不要)」「要自己管理(要受診)」「要受診確認(事業所管理)」の4つに区分されます。

通常勤務・就業制限・要休業については「産業医が行う健康診断への対応内容」で解説したとおりになります。

「産業医による保健指導の必要性」

健康診断の結果によって保健指導の有無が決まります。ここでは保健指導の必要性について解説します。

「なぜ保健指導が必要なのか」

保健指導は、生活習慣の改善や運動など健康を維持するための支援になります。ただ任意であるため、すべての企業が保健指導を行っているわけではありません。保健指導を行うことで従業員の健康状態を管理できるだけでなく、企業にとってもプラスになるため、実施したほうがメリットになるでしょう。

また生活習慣の乱れは、健康状態が悪くなるだけでなくメンタルヘルスにも大きな影響を与えることになります。近年では働きすぎによる死や精神疾患も増えていると言います。心身の健康を守るためにも保健指導の重要性を理解しましょう。

「保健指導の内容」

では、保健指導とはどのようなことを行うのでしょうか?

・生活習慣を考慮して指導する
すべての人に同じ指導を行うわけではありません。個々によって合う・合わないがありますから、それを考慮したうえで指導していきます。従業員の考えを尊重して指導していくため、目標も達成しやすくストレスもかかりにくいでしょう。日常生活において気持ち良く行動できるように支援するのが保健指導になるのです。

・各数値から判断し指導する
健康診断の結果はもちろんのこと、すべての数値から個々に合った指導を行います。健康状態を保つための対処法なども考慮してくれるので安心です。

・病気の発症を予防する
生活習慣の改善を行うことで病気の発症も予防します。従業員の健康状態を常に守るための指導を行うというわけです。

「保健指導の実施方法」

産業医または保健師が行います。企業に産業医がいる場合は産業医が保健指導を行いますが、そうでない場合は地域センターの産業医に相談することも可能です。指導方法は面談と文書が主ですが、症状がひどい場合は面談での個別指導になることが多いでしょう。

面談や指導は症状が深刻な従業員から順に実施されます。人数が多ければすべての管理が行き届かないことがあるため産業医だけでなく衛生管理者や保健師と連携して行うと効率良く指導できるようになります。

「健康診断後は産業医の指示に従う」

産業医がいる企業は、健康診断の結果をすべて把握されることになります。しかしそうすることで病気を早期発見できたりメンタルヘルスケアができたり、企業にとっても従業員にとっても悪い状態を回避できるようになりますから、健康診断後は産業医の指示に従ったほうが安全と言えるでしょう。