歯と口の健康について
6月4~10日は「歯と口の健康週間」です。
日本歯科医師会が2018年に行った意識調査によると、「これまでの人生を振り返って、もっと早くから、歯の健診や治療をしておけばよかったと思いますか」という設問に対して、およそ4人に3人が「そう思う」と回答されたそうです。
このように、忙しい毎日の中で口の中の健康については、何らかの症状がない限り中々意識が向かないものだと思います。
口の中の健康は、「食べ物をとり込み、食べる」「表情をつくり、話す」など、生命を維持し、充実した生活を送る上でとても大切なものです。
また、歯と口の健康は全身の健康とも関係していることが分かっており、口の中の健康維持が全身の健康維持のためにも重要であると言われています。今回は歯と口の健康についてお伝えします。
歯と口のトラブル
歯と口の中のトラブルで多いとわれているのが歯周病と虫歯です。歯周病や虫歯は歯を失う2大要因となっています。
歯の残存本数と全身の健康状態は大きく関連しており、残っている歯の本数が多いほど全身疾患のリスクが低く、長寿であると言われています。
近年虫歯の有病率は改善傾向にありますが、歯周病の有病率は日本人のおよそ8割と大変高く、歯周病による歯の喪失や全身への影響が大きな問題となっています。
歯周病とはどんな病気でしょうか?
日本の成人が歯を失う一番の原因がこの歯周病と言われています。
歯周病は、歯周ポケット(歯と歯茎の境にある溝)にたまった細菌の塊(デンタルプラーク)が原因で起こる慢性の細菌感染症です。デンタルプラークが歯茎に炎症を起こし、歯を支える歯茎や骨など周囲の組織を破壊してしまいます。このため、進行すると歯がぐらつき抜けてしまいます。
歯周病は、病気の初期にはほとんど自覚症状がなく、歯茎が少し赤くなったり腫れたりする程度です。痛みや歯茎が下がり歯がグラグラすると言った自覚症状が現れた段階では、かなり進行した状態となっています。このため、定期的な歯科検診を行い、歯周病の早期発見・早期治療を行っていくことが大切なのです。
歯周病が全身に与える影響
これまで、歯周病は「口の病気」として知られていましたが、近年、口腔内だけの問題でなく、全身の病気との関連性があることが分かってきました。
歯周病の原因菌は歯茎から血管に侵入し、血管を通じ全身に波及すると言われています。これまでの調査で、歯周病にかかっている人はそうでない人に比べ、1.5~2.8倍も循環器病を発症しやすいことがわかっています。
この他、歯周病は認知症や糖尿病、細菌性心内膜炎、誤嚥性肺炎、早産・低体重児出産、敗血症、糸球体腎炎、関節炎などの要因となったり、その病状を悪化させたりする危険因子として報告されています。
歯と口の健康を守るために
歯と口の病気は生活習慣病の1つと考えられており、生活習慣の見直しによって予防や改善が可能だと言われています。
自覚症状が現れる前の早い段階から対策を行うことがポイントです。
歯と口の健康を守るためのポイント
① 定期的にプロフェッショナルによるケアを受けましょう
口腔内に自覚症状がなくても、少なくとも半年に一度は、歯科医院での健診やクリーニングを受けましょう。
歯周病は、歯周ポケットの細菌や汚れが原因となりますが、歯磨きなどのセルフケアだけでは、十分に汚れを取りきることは難しいと言われています。このため、歯科で定期的にクリーニングを受けることが大切です。
② 禁煙しましょう
喫煙者は歯周病に3~8倍程度罹りやすいといわれています。禁煙も歯周病予防には大切です。
③ 日々のセルフケアもしっかり行いましょう
日々の歯磨きも大切です。毎食後の歯磨きをしっかり行いましょう。
また歯周病菌は夜寝ている時に増殖すると言われています。このため夜は歯磨きに加え、CPCなどの殺菌剤が配合されているデンタルリンスを併用することも効果的だと言われています。
④ 食生活を見直しましょう
バランスの良い食事を心がけるとともに、甘いものや柔らかいものを避け、よく噛んで食べましょう。
株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子