たばこと健康について

毎年5月31日は世界禁煙デーです。

WHO(世界保健機関)は、「たばこを吸わないことが一般的な社会習慣となるよう様々な対策を講ずるべきである」として、この世界禁煙デーを定めました。
また日本では厚生労働省が5月31日から6月6日までを「禁煙週間」と定めています。

今回は、たばこと健康についてお伝えします。

喫煙者の状況

令和元年に行われた調査(厚生労働省:国民健康・栄養調査)によると、日本で現在習慣的に喫煙している方の割合は16.7%(男性27.1%、女性7.6%)で、直近10年間でみると減少傾向にありますが、世界的にみると、たばこが原因で毎年約600万人もの方が亡くなっていると言われています。

また、そのうちの約1割の60万人が、受動喫煙が原因で死亡した非喫煙者だとされています。

たばこが健康に与える影響

喫煙には、因果関係が確実に認められるものだけでも、以下の様な健康障害の原因となると言われています。

  • 全身のがん : 肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝、膵臓、膀胱、子宮頚部
  • 循環器疾患 : 虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢動脈硬化症
  • 呼吸器疾患 : 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸機能低下、結核
  • 糖尿病 : 2型糖尿病の発症
  • その他 : 歯周病、ニコチン依存症、乳幼児突然死症候群、早産、低体重出生児・胎児発育遅延

なお、喫煙開始年齢が若いほど、がんや循環器疾患のリスクを高め、総死亡率が高くなると言われています。

たばこは喫煙者だけでなく、たばこの副流煙によって非喫煙者の健康障害を引き起こします。

受動喫煙で確実に因果関係があると認められているものとして、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群があり、この4疾患について超過死亡数を推定した結果、日本では年間1万5千人もの超過死亡が受動喫煙によって引き起こされていると推定されており、非喫煙者の受動喫煙による健康被害が非常に大きいことが分かります。

加熱式たばこ・電子たばこの健康への影響

加熱式たばこ
たばこの葉やその加工品を、燃焼するのではなく電気的に加熱し、エアロゾル化したニコチンや加熱によって発生した化学物質を吸入するタイプのたばこ製品です。

日本では2013年に発売されて以降、喫煙者本人及び周囲への健康影響、臭いなどが紙巻たばこよりも少ないのではないかという期待から、急速に普及してきています。

実際に化学成分を分析した結果からは、加熱式たばこの主流煙には多くの有害な化学物質が含まれてはいるものの、ニコチン以外の化学物質の量は、紙巻たばこよりも少なかったという報告があります。

しかし、ニコチン自体、がん・心疾患・呼吸器疾患を引き起こしますし、ニコチン以外の有害物質の量が 10 分の 1 に減ったとしても健康被害はほとんど減少しないとも言われています。
また、長期的な健康影響という点ではまだ明らかになっていないのが現状で、喫煙者と受動喫煙者の健康に悪影響を及ぼす可能性が否定できないと考えられています。

電子たばこ
電子たばこは、リキッドとよばれる液体を加熱し、発生させたエアロゾルを吸うものです。

海外ではリキッドの中にニコチンが含まれていますが、日本の電子たばこは法律によりニコチンが含まれていません。

リキッドの中にニコチンは入っていませんが、ホルムアルデヒドなどの有害物質が検出されたという研究結果があります。
また、米国では死亡事例を含む肺疾患等の健康被害が出ており、厚生労働省のホームページ上で注意喚起がなされています。

現段階では因果関係がまだはっきりとは分かっていませんが、使用者本人にも周囲にも健康影響が生じる可能性があると考えられています。

卒煙のために

喫煙者ご自身、そして受動喫煙の影響を受ける周囲の方の健康を守るためにも、加熱式たばこを含め、喫煙されている方は「卒煙(禁煙)」を目指しましょう。

禁煙される場合、禁煙外来の利用がお勧めです。自力で禁煙するよりも「楽に確実に」禁煙することが出来ると言われています。条件を満たせば、保険診療での禁煙治療が可能です。(加熱式たばこ利用者も対象)
禁煙外来では、オンライン診療も行われていますので、お忙しい方でも受診しやすくなっています。

禁煙治療を受けることが出来る医療機関は数多く存在しています。お近くの禁煙外来をお探しの場合、以下の「全国禁煙外来・禁煙クリニック一覧」を参照ください。

※日本禁煙学会作成「全国禁煙外来・禁煙クリニック一覧」
http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic.html

株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子