「小規模事業場産業医活動助成金」とは?産業医の導入に必ず活用を!

産業医の導入を検討されているのであれば、必ず知っておきたい制度が「小規模事業場産業医活動助成金」です。

産業医を選び、導入しようとすると費用が必要となりますが、小規模事業場産業医活動助成金を活用すれば、産業医1人あたり最大20万円の助成金を受け取ることが可能です。従業員50名未満の企業であれば、必ず活用したい制度です。

小規模事業場産業医活動助成金とは

「小規模事業場産業医活動助成金」とは、産業医を設置した企業が受け取れる助成金のことです。制度の目的や概要など、詳しい内容についてそれぞれ解説します。

小規模事業場産業医活動助成金の概要について

小規模事業場産業医活動助成金は、産業医や保健師を設置した会社の従業員数が50人未満のときに適用される助成制度です。厚生労働省の管轄により実施されています。

社内に産業医を設置しようとすると、従業員が産業医に相談するためのスペースや設備を用意しなければなりません。もちろん、産業医を選ぶ際にも費用が必要となります。従業員数50人未満の企業では、産業医の導入は「努力義務」となっており「義務」ではありませんが、積極的に産業医を導入しようとする企業に対して、産業医の設置にかかる費用の一部を助成してくれるのが小規模事業場産業医活動助成金です。

小規模事業場産業医活動助成金の目的について

小規模事業場産業医活動助成金の目的は、従業員を労働による健康被害から守ることです。

近年の長時間労働による過労死やメンタルヘルスの問題が浮き彫りになったことで、政府は積極的に労働環境の改善に努めたいと考えるようになりました。平成27年にストレスチェックが義務化されたことも、労働環境の根本的改善を図るためでしょう。

労働環境を改善するためには、従業員数が少ない企業にも産業医を導入してもらい、従業員の肉体面・精神面の健康を守ってもらうことが欠かせません。そこで、小規模事業場産業医活動助成金でサポートをすることによって、小規模事業所の産業医導入を促進させることが目的だと考えられます。

コース別の利用要件や助成金額について

それでは、小規模事業場産業医活動助成金のコース別の条件と助成金額について確認しましょう。3つのコースが用意されており条件は似ていますが、それぞれの違いを把握して確実に受け取れるようにしてください。

産業医コース

産業医コースで助成金を受け取るための条件と、助成金の金額は次のとおりです。

条件 ・平成29年度以降に産業医と契約をしたこと
・従業員数が常時50人未満であること
・労働保険が適用される事業所であること
・産業医が全てもしくは一部の産業医活動をしていること
・産業医が自社の従業員ではないこと
対象年月 令和元年11月~令和3年3月
助成金額 1回あたり10万円を6か月ごとに2回支給

小規模事業場産業医活動助成金を産業医コースで利用できる事業所は、平成29年度以降に産業医と契約した従業員50名未満の事業所のみです。助成金は6か月ごとに2回受け取ることができ、合計で最大20万円となります。

保健師コース

保健師コースで小規模事業場産業医活動助成金を受け取るための条件と、助成金の金額は次のとおりです。

条件 ・平成30年度以降に保健師と契約をしたこと
・従業員数が常時50人未満であること
・労働保険が適用される事業所であること
・保健師が全てもしくは一部の産業保健活動をしていること
・保健師が自社の従業員ではないこと
対象年月 令和元年11月~令和3年3月
助成金額 1回あたり10万円を6か月ごとに2回支給

保健師コースと産業医コースは、対象年月、助成金額は同じですが、条件として含まれる契約した時期に違いがあります。産業医の場合は平成29年度以降となっていましたが、保健師の場合は平成30年度以降となっており、平成29年に保健師と契約を締結した企業は適用対象外です。

また、保健師と産業医の両方を導入した場合は、それぞれ20万円ずつの支給となり、最大40万円を受け取れます。

直接健康保険産業設備コース

最後に、直接健康保険産業設備コースで助成金を受け取るための条件と、助成金の金額をご紹介します。

条件 ・平成30年度以降に産業医もしくは保健師と契約をしたこと
・従業員数が常時50人未満であること
・労働保険が適用される事業所であること
・従業員が産業医もしくは保健師に直接相談ができる仕組みを知っていること
・産業医もしくは保健師が自社の従業員ではないこと
対象年月 令和元年11月~令和3年3月
助成金額 6か月継続で10万円を6か月ごとに2回支給

直接健康保険産業設備コースでは、「従業員が直接相談できる仕組みを知っていること」という条件が加わることが特徴的です。従業員全員が、企業を通さず直接の相談ができることを知れるよう周知させる必要があります。

小規模事業場産業医活動助成金を利用する際の注意点

小規模事業場産業医活動助成金を受け取るためには、次のような注意点があります。

産業医・保健師が活動をした証明書が必要

小規模事業場産業医活動助成金の申請をするためには、産業医・保健師が実際に社内で活動を行ったことを証明する書類が必要です。具体的には、契約書・産業医資格証明書・活動実績報告書などが挙げられます。

また、産業医・保健師に支払いを行ったことを証明する書類も必要であることから、領収書は必ず保管しておくようにしてください。助成金を申請する際には、産業医・保健師の活動内容と、支払い状況がわかる書類を事前に用意しておきましょう。

受付期間内に申請をすること

小規模事業場産業医活動助成金は受付期間内に申請しなければなりません。申請期間を過ぎてから申請をすると、助成金が受け取れなくなる可能性があります。

助成金の受付期間は、「継続的に活動を行った期間の最終月翌月から6か月以内」と定められています。例えば、令和2年6月までが活動実施期間であった場合は、「令和2年7月~12月」が申請期間となり、2回分の助成金を受け取るためには半年ごとに合計2回の申請が必要です。必ず受付期間を確認して、期間内に申請を行いましょう。

助成金で実際の費用支払いができないこと

小規模事業場産業医活動助成金で、産業医・保健師を導入するための費用を支払うことはできません。助成金は後払いであるため、必要となった費用は一旦、自社の資金から支払う必要があることに注意してください。

助成金を受け取れる時期は、産業医・保健師と契約をした後に、実際に行われた活動内容を報告してからです。また、申請をしてから実際に助成金を受け取るまでには、ある程度の時間がかかることが多いでしょう。そのため、産業医・保健師を導入するための費用は、あらかじめ自社で準備する必要があります。

産業医を導入するなら「小規模事業場産業医活動助成金」を活用して

従業員50名未満の事業所で産業医を導入するなら、必ず「小規模事業場産業医活動助成金」を活用したいものです。

必要書類を揃えて期限内に申請を行えば、産業医1人につき最大20万円もの助成金が受け取れます。産業医の導入にかかる資金的な負担が軽減されることは間違いありませんので、今回の記事でご紹介した適用条件や注意点を把握して、必ず受け取れるよう慎重に申請を行ってください。