休職・復職支援で産業医が果たす役割やサポートの重要性について解説

メンタルヘルス問題が増えている昨今、休職・復職の対応は正しい方法で行わなければいけません。そのためには、産業医の役割やサポートを十分理解する必要があります。ここでは、産業医の役割・復職までの流れ・復職対応でNGなことを解説しています。産業医の選任に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

「休職者対応での産業医の役割」

メンタルヘルスの不調が深刻になっている現在、産業医の必要性も相対的に高まっています。従業員が安心安全に働けるように管理するのが産業医ですが、万が一休職者が出た場合、どのように対応することがベストなのでしょうか。ここでは休職者に対する産業医の役割について解説します。

「いつから就業できるか知る」

産業医だけでなく、人事や総務も一緒に「いつから就業できるか」などを役割分担しながら進めていきます。産業医は専門的な知識を用いて、“いつから就業できるか”従業員の心身状態を判断します。就業可能と言われる状態は次の5つになります。1つ欠けていても就業は難しく、また定期的に従業員と連絡を取って随時状態を把握しなければいけません。すべての条件を満たしていることで就業が可能になるというわけです。

◎就業したいという意欲がある
◎規則正しい生活リズムが送れている
◎翌日までに疲労回復可能な状況である
◎通勤できる状態かつ業務の遂行が可能
◎環境に適応できる

復職できるか、まだ休職していたほうが良いかは「安静にしていたほうが良い」「日常生活が送れる」「就業可能」の3つに分けられます。どんなに体調が良くても、通勤できる状態での業務遂行が可能でなければいけません。これらの条件を満たしているかを判断するのが産業医の役割になるのです。

「復職後もフォローが必要」

もちろん復職後もフォローは必要です。せっかく復職できても症状が再発しないとは限りません。それを防ぐためにも、万が一問題があった場合は産業医が迅速に対応することが必要になります。基本的に産業医が作成した“職場復帰プログラム”に沿って進めていきますが、従業員に過度な負荷がかからないことが大きなポイントです。

「休職者の職場復帰までの流れと産業医のサポート」

休職者が復帰するまで、産業医は休業中からきちんとサポートする必要があります。主治医が作成した病気休業診断書を管理監督者へ提出し、まずは人事やケアの対応を行ってくれる必要なスタッフに報告します。産業医がいるのであれば産業医にサポートしてもらうことになりますが、必ず診断した主治医と連携し、該当従業員とやり取りしなければいけません。

復職の有無は「休職者対応での産業医の役割」でも述べましたが、就業が可能な状態を判断したうえで指示されます。また復職可能な診断書の提出も必要になるため、個人の判断で勝手に復職することは不可能です。診断書を書いてもらっても、産業医が「問題ない」と判断しなければ復職はできません。

このように、休職者が復職するためには主治医・人事・産業医すべての連携と情報共有が必要になってくるでしょう。

「従業員の休職と復職対応でよくあるNG例」

休職・復職への対応は、どうしても対症療法になることが多いと言われています。そのため、対応の際に失敗してしまうことも少なくありません。なかには大事に至ってしまうケースもあることでしょう。そういったことのないように、NG例を知って休職・復職にきちんと対応できるようにしましょう。

「絶対に避けたいオリジナル対応」

意外と多いのが、マニュアルを理解せずにオリジナルの対応で休職・復職のケアをしている企業が多いという点です。もっときちんと対応していれば大事に至らなかったことも、オリジナル対応のせいでメンタル疾患が悪化したという事例も多いのが現実です。

たとえば、すべての仕事を一人で担っていた若手社員がメンタルヘルスの不調を上司に訴えたにも関わらず、「能力不足」「甘え」と判断しきちんと対応しなかったケースがあります。若手社員がメンタルヘルスの不調を訴えているにも関わらず、上司は能力不足・甘えで片付けてしまい、職場環境の改善は一切なされなかったと言います。結果、その若手社員はメンタルヘルスの不調が悪化し、休職することになってしまいました。

この例の上司のような勝手な判断は、メンタルヘルスを悪化させ時に死に至らせてしまう恐れもあります。今回のケースは腹痛や吐き気だけで済みましたが、少しでも社員が不調を訴えたのであれば、早めに対応する必要があるでしょう。

もちろん復職するときも同様です。見た目だけで「大丈夫だろう」と判断し復職させてしまうのは非常に危険なことになります。休職中のケアも正しい方法で管理しなければ、状態が改善されることはないでしょう。オリジナルの対応がいかに大事に至ることか十分理解し、必ず専門家に相談するようにしましょう。

「休職・復職支援では産業医との連携が重要」

休職・復職をサポートするためには、上司が勝手に判断するのではなく、産業医や主治医などの連携や情報の共有が重要になります。産業医を選任できない・選任していない企業でも、不安を相談できる窓口を利用するなど、正しい処置を行えるようにしましょう。

「産業医と主治医どちらの意見が大切?」

産業医も医師ではありますが、ここでいう主治医は従業員のメンタルヘルスを治療する医師のことを言います。そのため主治医の診断を受けたあとは、必ず産業医によって休職・復職が判断されます。よって、主治医の意見より産業医の意見を尊重するのが原則となっています。

また主治医の診断書は従業員が復職を希望すれば作成してもらえますから、あまり当てになりません。実際、完治していないのに復職したい一心で主治医に「治った」と診断書を作成してもらい、結局再休職になってしまったケースは少なくないと言います。

このように、主治医の診断書ではわからないことを確認し、復職できるか判断するためには、主治医だけでなく産業医の意見も重要になってくるのです。よって主治医・産業医・その他必要なスタッフが連携し情報を共有することが大切なのです。

「もし産業医が内科医だったら」

メンタルヘルスの場合、産業医は精神科医のほうが専門的な視点から対応してくれるので安心です。しかし、なかには内科医の産業医も存在し、圧倒的に精神科医が少ないため、メンタルヘルスに特化した精神科医を選任したいと思っても、なかなかうまく選任できないということは多々あるでしょう。メンタル疾患を内科医が判断しても意味がないと不満を持つ企業も少なくないと言います。

「適切な産業医を選任するためには」

産業医はさまざまな場所で探すことができます。全体的に精神科医は少ないのが難点ですが、それでも探せば必ず見つかりますので、メンタルヘルスを訴える従業員が多い企業は、下記の場所に相談してみると良いでしょう。

・産業医紹介サービス
・医師団からの紹介
・人脈を利用する

(産業医紹介サービス)
もっともスムーズに産業医を見つけることができます。さまざまな産業医が登録していますから、精神科医の産業医も見つかりやすいでしょう。先ほども述べたように、メンタルヘルスに強い産業医を選任するなら、精神科医から探すのがおすすめです。紹介料はかかりますが迅速で確実なので安心です。

(医師団からの紹介)
地方で産業医を探す場合に適しています。ただ産業医と直接契約になるケースが多いため、他の選任方法より報酬が高くなりやすい傾向にあります。

(人脈を利用する)
ツテがある方は、人脈を利用するのもおすすめです。信頼している医師からの紹介なら安心ですし、直接依頼できるので面倒な手間も省けます。ただ産業医が見つかりにくい・義理やしがらみでトラブルが発生した際の対応が面倒なのはデメリットになります。

「休職・復職の対応は産業医の意見を尊重する」

勝手な判断で休職・復職することがいかに危険であるかがわかりました。そして、いかに産業医の存在が重要であるかもわかったのではないでしょうか。また産業医でも「メンタルヘルスに強い産業医」「弱い産業医」がいますから、そこも十分理解したうえで適した産業医を選任しましょう。企業側も産業医の役割やサポートの重要性を知ることで、早急な対処ができるようになります。