睡眠時無呼吸症候群(SAS)について

2000年代はじめ頃から、睡眠時無呼吸症候群に関連した列車やバス等の事故が報告されるようになり、この病気が注目されるようになりました。

睡眠時無呼吸症候群は睡眠の質を下げ、日中の眠気やパフォーマンス低下といった症状をもたらすだけでなく、高血圧や脳卒中、心筋梗塞等の循環器疾患や糖尿病など様々な疾患とも関係があると言われていますので、適切な対応が必要となります。

今回は睡眠時無呼吸症候群についてお伝えします。

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が止まりかける「低呼吸」とを繰り返す病気です。英語表記の「Sleep Apnea Syndrome」より「SAS」とも呼ばれています。

SASには中枢性と閉塞性の2つのタイプがありますが、SAS患者のほとんどが「閉塞性のSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA))」だと言われています。

閉塞性のSASは、体重増加による首周りの脂肪増加や、扁桃腺肥大等による喉・上気道の狭窄などが原因となり、空気の通り道である上気道が狭くなることが原因で起こります。
肥満がない場合でも、顎が後退していたり、顎が小さく、舌が収まるスペースや気道が狭い場合には、閉塞性SASが起こると言われています。

SASを起こしやすい身体的特徴があれば、年齢・性別にかかわらずSASを発症するリスクがありますが、発症数の傾向を見ると中年以降の男性が多くなっています。
女性は50歳以上の閉経後に患者数が増加する傾向にあります。

睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠中の症状

  • いびきをかく
  • 呼吸が止まることがある
  • 夜間の尿量やトイレの回数が増える
  • 何度も目が覚める

起床時の症状

  • 頭痛がする
  • 身体が重く感じる
  • 熟睡した感じがしない
  • 口が渇いている

日中の症状

  • 強い眠気がある
  • 居眠りしてしまう
  • 疲労感やだるさを感じる
  • 集中力や記憶力が低下する

SASの特徴として「日中の強い眠気」がありますが、中には日中の眠気を感じないケースもあると言われています。
日中の眠気がない場合でも、それ以外の症状がある場合は、医療機関にご相談いただくと安心です。

睡眠時無呼吸症候群の影響

SASが引き起こす集中力の低下や日中の強い眠気、居眠りは仕事のパフォーマンス低下だけでなく、業務中の事故、すなわち労働災害のリスクとなります。
また睡眠中の無呼吸は、心・脳血管に負担をかけ、高血圧や心筋梗塞、心不全、心房細動、脳梗塞などの循環器疾患や、糖尿病、脂肪肝のリスクを高めると言われています。

症状が重いSASを放置すると、これらの疾患により死亡率も高くなるため、適切な治療を行うことが必要です。

無呼吸の状態は睡眠中に起こるため、自分自身では中々気づくことが出来ません。
先に挙げたSASの症状に心当たりがあればSASの可能性がありますので、かかりつけ医または睡眠外来等の専門医を受診しましょう。

睡眠時無呼吸症候群の治療

問診などでSASが疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行います。
PSGで1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である「無呼吸低呼吸指数(AHI)」が5以上であり、自覚症状が伴えばSASと診断されます。
【 AHI 軽症:5~15、中等症:15~30、重症:30以上 】
この重症度や、無呼吸となる原因に応じて以下の様な治療が行われます。

生活習慣での対応
体重の10%減少で無呼吸の改善がみられると言われています。アルコールの摂取は上気道の筋力を低下させ閉塞を促進させるので、就寝前の飲酒は控えるようにします。
また、仰向け寝をすると気道の閉塞を起こしやすいので、睡眠中は横向きに寝る工夫を行うことも有効です。

マウスピースによる治療
下あごを前方に移動させるマウスピース使用し、咽頭部分を広げます。

手術による治療
手術により咽頭や口蓋垂を形成し、上気道を広げます。

CPAPによる治療
AHI20以上の中等症から重症のSASでは、鼻にマスクを装着して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる「経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)」が行われます。
この治療を行うことで、SASによる様々な症状が改善されるとともに、死亡率を正常な人と同レベルまで下げることが出来るとも言われています。

株式会社メディエイト 保健師 小河原 明子